あたしは師匠の三遊亭圓生によく言われた言葉がある。 「芸というものは、丸々、教わり過ぎてはいけない。物真似のような軽々しいものしか得られないからだ」 では、どう学べばいいのだろうかと、あたしは考えるようになった。 さらに圓生は言った。 「芸は盗むもんだ」 あたしは窓輝にもそのことを伝えてきた。 「芸には貪欲であってもいいが、芸名をあれこれと欲しがるな。 盗んでいいのは芸であって、芸名を盗もうとしてはいけない」 いつの頃からか、窓輝も多くのいい噺家のいい噺に耳を傾けるようになった。 で、この度の真打昇進に際し、「名前は窓輝のままで行く」と言ってきた。 前座のときの窓輝。二つ目もそのままで窓輝。そして、真打になっても窓輝。 こんな窓輝がいつか、「初代 三遊亭窓輝」と言われるようになれますよう、ご声援のほど、よろしくお願い申し上げます。