圓生物語

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紐 解 記(ひもどき)2

圓 生 物 語・二 の 巻  圓 生 の 序 破 急 

1999・09・03(金)
開演18:00
銀座・ガスホール
大入り満員(300人)


番 組:序の章 落語 [牛ほめ] 三遊亭福楽
落語 [目黒の秋刀魚] 三遊亭楽之介
落語 [花筏] 三遊亭吉窓
落語 [お化け長屋] 三遊亭圓楽
 
破の章 座 談 三遊亭鳳楽
春日三球
三遊亭好楽
漫 才 春日三球
三遊亭楽太郎
急の章 落語 [音曲風呂] 三遊亭圓橘
落語 [通夜の烏] 三遊亭圓窓

紐解記 1
文  ただしろう


 既にご承知の通り、「圓生物語」は、圓楽一門、圓窓一門、合同主催による、六代
目三遊亭圓生を顕彰し、その至芸を後世に伝え、さらに次世代の後継者達の育成を目
的として発足した企画。
 年一回、圓生の命日の九月三日に開催することになっており、今回はその第二回目。
この企画では第一回を一の巻、第二回を二の巻と呼んでいる。
 全指定席の会場は満員の盛況。


 開幕「序の章」は落語が続く。
[牛ほめ]を除いて圓生が高座にかけた演目が並ぶ。
 この章のトリは圓楽の[お化け長屋]。古狸の杢兵衛作る怪談噺が失敗するくだり
は場内爆笑の渦。
「破の章」は色物で圓生を偲ぶ。
 まず、鳳楽、好楽二人が、漫才の春日三球を挟んで座を占め、三人で大師匠の思い
出話を語る。
「あたし(三球)は、よく圓生の膝替わり(トリの前に出演する)を勤めさせていた
だきました。
 あるとき、圓生師が足袋を忘れて楽屋入りしましてね。当時、前座の鳳楽が同じ大
きさの足袋を他の出演者から借りて来たが、これが汚くて圓生師匠の気に入らず、結
局、靴下で高座に上がることになったんです。
 上がるときは注意していたからよかったが、降りるときはそれを忘れて悠々と歩い
たから、靴下だったのがわかってしまったってことがありました」
 と数々のエピソードに花が咲いた。
 次はその三球と楽太郎が即席の漫才コンビを組むという趣向。
 三球はおなじみの地下鉄ものをはじめ、変わらぬ才気で客席を沸かした。楽太郎が
霞んで見えたのも漫才という芸の性格上やむを得ないだろう。
 この破の章は、構成上、いい色物の役割を果たした。
 ここで、中入りとなり、急の章へとつながる。
「急の章」、はじめは、圓橘の[音曲風呂]。冒頭、「漫才が伸びて持ち時間が削ら
れた」と笑わせ、噺に入っては、音曲の稽古ぶりで笑わせながら、堅実に噺をまとめ
る。
 そして、トリが圓窓[通夜の烏]。
 この噺は、圓生師匠が、講談の邑井貞吉に教わったという[吉住万蔵]を圓窓が演
出を工夫して、演ずるというもの。
 怪談としては異色と写るので、聞いている方も少ないと思う。
 梗概はこの項の巻末のリンクから”圓窓五百噺ダイジェスト”を読んでください。
 怪談は、怨念が幽霊などの形で相手に取りつくというのが普通だが、これは幽霊は
出ず、無形の怨念のみが活躍する。
 形になれば却ってやりやすいと思うが、無形のままの怨念を描くというのは素人料
簡にも難しいと思う。
 和尚が、葬列の先頭で宿屋の二階を見上げ、万蔵と目を合わせるシーンは怖さが迫
る。そして、謎めいたサゲもきまって、圓窓は見事に二の巻きを締めた。
紐解記 2
文  あきら


 圓楽師の[お化け長屋]を聞いていて、僕が持っている文庫本に記述されている圓
生師匠の[お化け長屋]と、マクラが一緒だったので、「やっぱり、圓生物語だから、
圓生師匠のやり方でやっているのだろうか」なんて考えてたんですが、昨日、会社の
有線放送を落語のチャネルに合わせたら、偶然、圓生師匠の[お化け長屋]をやって
たんです。
 そうしたら、全然違っていました。どっちがどっちとも言えませんけど。


[通夜の烏]ですが、圓窓師匠には内緒で暴露してしまいますけど(笑)、昨日、電
話で話していたときに,[通夜の烏]の裏話を教えていただきました。
[通夜の烏]って、しばらく演ってないので、稽古しようと思ったら、パソコンの中
から、昔やっていたパソコン通信・マスターネット(株)のデータから[通夜の烏]
が出てきたんだそうです。
 そういえば、あの噺はマスターネットが賑やかだった頃に、有志でヤイノヤイノ言
いながら育ててた噺だったんですね。
 それで、そんな古い資料を見ているうちに、すっかり嬉しくなって改めて資料を整
理したり、他の資料を捜したりして、肝心の噺の稽古は全然出来なかったんだそうで
す。
「一度も稽古しないで高座に掛けて大丈夫なんですか?」って聞いたら「高座は出合
いの勝負です」とのお答えでした。
 つくづく恐ろしい人だと思いました。


 ついでに、師匠。(ここからは内緒ではありません)
 以前から思っていたんですが、万蔵はちょっと年齢より老けているように思うので
すが、あれは演出なんでしょうか?
 江戸時代の26歳ってのは、今よりもずっと老けていたからって事なんですか?
紐解記 3
文  圓窓


 あきらさんへ。
 その件、昔のマスターネットの記録にも残ってます。
 平成2年のことです。
 あきらさんが同じような質問をあたしにしてます。


 圓生では、歳は二十ちょっと、なんですが、あたしは26にしました。
 江戸時代、26、しかも、鳴り物師、となると、大店の若旦那やタイコモチの26
とは違うはず。
 鳴り物師は芸の社会で、まして、芸談もするとなると、大人びてくるのではないで
しょうか。
 というのが、あたしの設定です。
 女も年上に変えました。執念、身投げを考えると、年上のほうが圧力がかかるよう
な気がして。
 あたしに体験があれば、いいのですが、ないもんで、机上の筆です。
紐解記 4
文  あきら


 ダッハッハッハッハッ。
 そうでしたか。やっぱり、同じ事を思ったんですね。
 そうなんですよね。江戸時代の年下の人間に会ったことがないので、よくわからな
いのですが(笑)、寿命が50ちょこちょこだと考えると、20過ぎれば名実ともに
大人だったのでしょうね。
 明治維新も、そのっくらいの若者が事を成したんですからね。
 なんか、人生の密度が全然違うような気がする。
紐解記 5
文  圓窓


 あたしも江戸時代の人の面識はないもんで。(笑)
 でも、現代人より、グーンと大人だと思いますよ。
 二十で成人式ったって、情けない二十が目立ちますよ。
 昔の元服のほうが遥かにしっかりしていたようですよ。
 家の中の教育の差かな、時代の違いかな。
紐解記 6
文  無銭


 今の80歳が昔の50歳に相当すると考えると、今の32歳で昔の20歳にやっと
相当する。
 今の20歳は昔の13歳のちょい手前、という人もいる。
 そう考えると納得が行くような気がする。
 わたし? 昔の34歳、頑張らなくっちゃ。(笑)
紐解記 7
文  あきら


 係数は1.6ですね。
 昔の年齢×1.6 = 今の年齢
 これによると、万蔵は26ですから、現在の年齢に直すと41歳後半って事になり
ます。
 僕とほぼ同じ歳です。
 やっぱり、あと3年で、万蔵のように落ち着いてないといけないでしょうか?
 よっぽど、家の中の教育が足りなかったようです。
 ちなみに、犬の係数って5.3っくらいですか?
紐解記 8
文  圓窓


 前座の頃、明治生まれの師匠連中が年寄りに見えて、尊敬したもんです。
 みなさん、50代で。
 ところが、あたしが今、50代です。
 どこに、尊敬されるところがある? って、恥ずかしいくらいです。
 今の50代って、ちゃちなもんです。(笑)
紐解記 9
文  圓窓


 ついでに、ハナシカの係数を出してみてくれないかな?(笑)
紐解記 10
文  あきら


 それは難しいですね。


見習い 3ヶ月〜半年 普通の会社の試用期間
前座       3年        平社員
二つ目     10年      主任〜係長


 ここまでは、社会人とあまりかわらないかも。
 大きく違うのが、主任〜係長は部下を使うのに、二つ目はほぼ個人経営、社長兼従
業員ってところですね。
 その後真打になったら、全然、出世の度合いが違いますよね。


 などと言いつつ、自分自身が世の中の係数とかけ離れていることに気が付く。
2002・6・26 UP