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読書三昧

善書します 読んじゃった




善 書 し ま す

「どこかに善い本はないかね?」「ハイ、善書します」


圓窓五百珈琲小咄を読む本審判だからわかること寄席殺人事件
妖怪草紙・くずし字入門落語・歌舞伎あわせ鏡落語つれづれ草
落語と歌舞伎粋な仲落語のすべて落ナビ
文責 圓窓





『 プロ野球・審判だから わかること 』
田中俊幸 著
2004・9・24発行 草思社 定価(税込み)1575円


 著者は、セ・リーグの審判部長を03年に球界から引退したつわもの。圓窓が30
年ほど前、噺家の野球チーム(ダジャレーズ)を結成して名古屋へ乗り込んで中日球
場で2ゲームをやったとき、現役審判としてパリパリのこの田中さんが洒落に球審を
引き受けてくれた。「ストライク」「ボール」の声がほとんど空席の球場全体に響き
渡り、「さすがぁ」と感動したことを鮮明に覚えている。
 後年、窓門会の飛脚方のYさんが著者と下関で高校の同級生だったと知り、よりい
っそう甘えさせてもらい、窓門会の会員になってもらったり、落語会のゲストで「ア
ウト」「セーフ」の発声をしてもらったりで、多くの人々を感激させてくれた。
 そんな関係の著者が本を著したのだから、我々からすると、まさに「大待望」であ
る。書くのにそうとうに苦労したことが読み取れた。とりわけ、人の実名の扱い方の
難しさは、著者でなければ実感できないであろうことが処々で窺がわれる。褒めたり、
同意見のことならば実名は弊害はなかろうが、辛口批評だったり、異論だったりする
と、実名は出しにくいものなのだ。この本には「ある人」とか「某監督」なんという
箇所は見付からない。ほとんど実名である。仮に、本の登場人物がそれを手にしたと
き、「どうぞ、怒って結構ですよ」というつもりはなく、「いくらかでも納得してい
ただけたら」という配慮があるような文脈には感服させられた。それには、著者の謙
虚さがなければできない。野球とは門外漢の読者の一人として、
それを感じたのである。
 文中に「ジャイアンツの桑田投手を応援するわけではないが、審判(著者)にも、
復帰までに苦しい練習を続けてきた苦労がわかる。『桑田、勝ってくれ!』とは思わ
ないが、『無事にピッチングをしてくれ!』と祈るような気持ちでジャッジしていた
」とある。
 これにはジーンときてしまった。以前、誰やらの「審判は神のような存在である」
という意見を耳にしたことがある。そうは言うものの、やはり、人間だ。野球ルール
に従って冷静に判定を多くの人に示す能力を備えなければならない人間なのだ。選手
や監督とは違う目、観客とも違う目、もちろん、マスコミとも違う目である、「審判
の目」という独自なものを持っているプロなのだ。選手や監督からの駆け引きに負け
ない威厳ある目、観客の感情にも負けない冷静な目、ましてや、マスコミの取材や報
道に振り回されない確固たる目でなければならない。
 得てして、人間は自分の物差しですべてを評したがるもの。そして、騒ぎたがるも
の。審判も人間なのだから、その一人かもしれない。が、その物差しは多くの人の物
差しをも熟知した上での冷静な物差しである。
『桑田、勝ってくれ!』という思いは人間なら多くの人にあるであろう。『無事にピ
ッチングをしてくれ!』という思いは神の思いなのかもしれない。
 野球を見直すためにも、審判を知るいい本である。推薦する。
2004・10・17 UP





『圓窓五百珈琲小咄を読む本』
2002.01.01発行 富士コーヒー且ゥ主出版
 世に「知る人ぞ知る」という事柄はよくある。実は圓窓五百噺と平行してやってき
たことがある。名古屋の「富士コーヒー梶vをご存知か。圓窓五百噺をずぅ〜っと二
代に亘って応援してくれた会社だ。その社の広報誌に毎月二つずつのコーヒー小咄を
連載していた。その数も500を突破したので「記念に本を」ということで、この本。
なにしろ、コーヒー、コーヒー、コーヒーだけで500である。この手のものは世界
広しと言えど、この本だけと自負している。本屋には置いてない。圓窓にお頼みあれ。
2002・4・11 UP





『妖怪草紙 くずし字入門』アダム・カバット 著
2001・07・15 発行 柏書房 刊 定価 定価2300円+税
 江戸時代に流行ったという草双紙は今のマンが本。「今、それを読んでみたくとも、
絵の面白さはわかっても、ほとんどが仮名であるにもかかわらず、あのくずし字が読
めなくてねぇ」と嘆く人が多い。あたしもその一人。それに見事に答えてくれたのが、
この本。妖怪の草双紙をテキストとして、わかりやすく、かつ、江戸の知識を得なが
ら、解説をし、問題を出し、そして、復習の大切さを力説する。「この本で取り上げ
た仮名86数、漢字69数を身に付ければほとんどの草双紙は読破できる」と言う。
2001・9・26 UP





『落ナビ』落語ナビゲート隊
2001.09.10発行 文芸社 定価(税別)1500円
 落語の入門書。この手の物はどの書も落語家のトップ、ベテランから扱っていく創
り。だが、この『落ナビ』は01年9月に真打に昇進する落語協会の若手10人にス
ポットを当てながら「落語とはなんぞや」「寄席とはどこぞや」を進める。販売とし
ては冒険的な書であるが、発想としては画期的な書であり、拍手を送りたい。見飽き
のない生き生きとした写真やイラストを配置して週刊誌のような創り。気なしにどこ
をめくっても、読んでおこうおかなと思わせる構成、デザイン。読みやすさ、楽しさ
のある上級の書であろう。
2001・9・26 UP





『落語のすべて』TBS落語研究会編
1999.08.25発行 日本文芸社 定価(税別)1500円
 編集元が[TBS落語研究会]。知る人ぞ知る、頑ななプロデゥーサーの色が強く
出ているホール落語会だから格調高すぎて初心者には読みにくかろうと思うと、さに
あらず。サブタイトルが「まるごと落語がわかる本」「とことん楽しむ」とあるよう
に、幅広く易しく作っている。たぶん、その頑なな人はタッチしてなくて、TBS事
業部の手による編集であろう。なにはともあれ、圓窓・窓樹の師弟が載っているから、
一読の価値はある。





『落語・歌舞伎あわせ鏡』清水一朗 著
 1998/11/25 発行 三一書房 刊 定価(税別)2200円
時期を同じく落語と歌舞伎のつながりを記した本がまたもや出た。この著者は落語
界では「宇都宮の清水さん」と呼ばれ、宇都宮近辺において自分も落語を演じるが、
プロを招いての落語会も主宰しているので落語は詳しい。また、歌舞伎の台本も書き、
松竹から大きな賞も受賞している。それだけに知識、資料は豊富でセンスもいい。「
圓窓からの質問がきっかけとなって、この本を書き上げた」と著者は前書きで述べて
いるのが、圓窓には嬉しい。文章を多くして、たっぷり読ませようという本。二冊読
むといい。





『落語と歌舞伎粋な仲』太田博 著
                  1998/10/12 発行 平凡社 刊 定価(税別)1600円
 国立演芸場で[寄席芸の中に見る義経三本桜の世界]を企画した折、著者を交えて
の座談で「鼓の皮は歌舞伎では狐、義太夫では羊」と教えてくれた人。圓窓は載って
いるのか。載ってます。圓窓が国立演芸場で演じた落語[猫の忠信]で宙乗りをした、
その歴史的な(?)の写真を載せているから、貴重なことこの上ない本。もちろん、
その他の写真も多く載せて見せる楽しみがあり、解り易く読ませること間違いなし。





『寄席殺人事件』永井泰宇 著
          1999/08/05 発行 講談社ノベルズ 刊 定価 定価(税込み) 924円
 この本も圓窓が推薦している。「泰平の落語業界に殺人という大トラブルを放り込
んだのがこの小説」と。きめ細かい筆のタッチは読みでのある大作だ。著者は圓窓の
高校時代同級生で、劣等性の順位を争った仲。卒業後すぐ、漫才の三球・照代の台本
を書いたことがあるそうだ。ただし、それが寄席で演られたかどうかは、いまだに不
明。





『落語つれづれ草』柳沢睦郎 著
          1994/07/10 発行 鳥影社 刊 星雲社 発売 定価(税込み)1400円
 圓窓が推薦文に「著者は貴重な昭和の落語の生き証人」と評した。これほど素直に
真面目に落語を愛した日本人はそうはいないだろう。まさに生き証人。著者は寄席で
もホール落語会でも必ず前座から聞き、素直に笑い声を発して落語を楽しんでいる。
「前座、二つ目は聞いちゃいられねぇ」とか、「先代はよかった」などと、気取って
ロビーの椅子に腰を下ろして、お目当てが高座に出るのを待っている人種とはわけが
ちがう。