映画三昧 芝居三昧 読書三昧 俳句三昧 珈琲三昧 チケット笑樂 トップページ

映画三昧

ヨーガス長屋 映画素人評論

映画素人評論

洋画鑑賞への夢


 今 描いている洋画観賞の夢

文 圓窓
 この年の初夏に、何年振りかで映画館に入って、〔恋に落ちたシェイクスピア〕を
見てから、シェイクスピア全集を読み直そうという笑涯楽習気分になり、読んだ、読
んだ。ついでに、〔ベニスの商人〕をアレンジして演劇落語[胸の肉]まで創作して
しまった。
 と同時に、洋画っていいなァ、と感激してしまい、ついに、洋画を積極的に見よう
と決心し、今、盛んに見て回ってます。
 で、気がついたのは、悔しいのだが、洋画ファンの多いこと。落語ファンは捜すの
に苦労するが、洋画という石を放れば、必ずファンにぶつかるほどだ。
 映画の感想をぶつけ合うって、こんな楽しいことはない。素人でも評論家になれる
ことを証明しつつ、時間の経つのも忘れるくらい、話題に花を咲かせてしまう。

 そこで思ったのは、「洋画ファンが月に一度、同じ日時、同じ館で一つ洋画を鑑賞
して、そのあと、食事をしながら評論家大会でも開けないだろうか」という夢。
 早い話が、洋画観賞クラブの結成だ。思案はどんどんと広がって行く。
 早速だが、クラブのネーミングだ。さて……と…。
 江戸時代、よく使われた言葉に「〜げす」とか「〜がす」というのがあります。
 今でいう「〜です」ということでしょう。
「さようです」と言うのを「さようでげす」とか「さようでがす」と言った人もいた
ようです。「〜げす」はなんとなく柔らか味、品がありますが、「〜がす」はどうも
がさつな響きがあります。
 ところで、同時代、「良いですね」という意味で、「よぅがす」という言葉も使わ
れてました。これは「よぅげす」とは言いにくいので、「よぅがす」という言い方し
かありません。これは「〜がす」なんですが、これを軽く柔らかめに発すると、なか
なかいいもので、古典落語にはもちろん使われていますが、我々の楽屋でも普段の会
話としてよく使っています。
 そこで、「洋画は良いですよ」という意を込めて、「ヨーガス」と洒落てみてくだ
さい。
 それを、洋画観賞クラブの名称にしたいのです。

 てな、夢、いかがでしょうか。
2000・1・3 UP
      [胸の肉]の高座本は、圓窓五百噺全集/創作落語/演劇落語/胸の肉
      [胸の肉]の梗概は、圓窓五百噺付録袋/圓窓五百噺ダイジェスト/胸の肉






99年度のベスト映画


 勝手流 99年度の洋画ベスト5

文 圓窓

 今年の初夏、洋画に目覚めて以来、半年強ですが、観た映画を列挙します。
 その前に一言……。
 映画は映画館で観ることを基本姿勢としていますが、館で観られなかった作品はやむ
をえずビデオで見ることにしています。
 日本映画は義理や柵が絡んだ作品に絞って観ています。
 その理由は、洋画のほうが台本が面白いから、の一言です。
 どうも、和画(筆者の勝手語)は台本が貧相でして、創作落語の役に立つのはほとん
ど洋画なのです。
 そんなことで、洋画鑑賞クラブを結成したい夢も描いてます。
 おっと…、それは、さて置き、観た映画を列挙します。

〔恋に落ちたシェイクスピア〕〔奇蹟の輝き〕〔ペイバック〕〔パッチ アダムス〕
〔メッセージ イン ア ボトル〕〔ノッテングヒルの恋人〕〔運動靴と赤い金魚〕
〔シンプル プラン〕〔マトリックス〕〔ライフ イズ ビューティフル〕
〔海の上のピアニスト〕〔シックス センス〕〔エイミー〕

〔プライベート ライアン〕(ビデオ)
〔ライフ パラダイス〕(国産) 〔マザー〕(国産) 〔アイラブユー〕(国産)

 こんなに観ているとは思いませんでした。思い出すのに苦労する映画もあったりして、
書き出すのに頭の中はえらい騒ぎです。
 
 ここで、洋画ベスト5、ですが、、、、。

  1 海の上のピアニスト
  2 ライフ イズ ビューティフル
  3 パッチ アダムス
  4 エイミー
  5 メッセージ イン ア ボトル

 ということです。
 みなさんは、どうでしたでしょう。
 Eメールでみなさんの観賞した映画の感想を送ってください。
2000・1・3 UP







鑑賞映画一覧

 『シックス センス』

(1999年 アメリカ製作)
観賞日:1999・12・29(木・晴)
映画館:新宿伊勢丹の前
 デスカウントチケット:1600円
文 圓窓

 上映の冒頭の「この映画の秘密は、まだこの映画を見ていない人には喋らないでくだ
さい」という字幕に、まず、おや? と思う。
 ホラー、とか、ホーラーとか言われる映画は好まないので、そうならぬことを望みな
がら字幕を読む。
 主役の子供が自然で巧い。憎らしいくらい巧いのとはわけが違うから、好感もててよ
い。
 ときどき、客席の女の子から「キャー!」という悲鳴も上がるが、それほど、どぎつ
くなくていい。その子供には死者の姿に見える、というのだが、日本では、「幽霊を見
た」ということなので、それほど驚くには当たらない。歌舞伎では太鼓のウスドロが鳴
って幽霊の登場となるが、この映画ではさりげなく、スーと出る。
 この作品の目玉の部分の最後のどんでん返しが利いている。あたしもひっかかった、
と白状する。本がしっかりしている証拠だろう。
 創作落語もそうだが、「途中で落ちがわかりました」という評を聞くことがある。落
語はそれがテーマではないのでショックは受けないが、聞き手にしてみると、落ちは聞
いてから「なるほど」と思わせてくれるほうがいいようだ。そのくせ、「古典落語は落
ちはわかっていても楽しめる」と言う。ということは、創作した作品が一日も早く古典
の名作のレベルになれば、つまり、そう認知されればいいわけだ。
 しかし、それが難しい。
2000.1.10 UP



 『 エ イ ミ ー 』

(1999年 オーストラリア製作)
観賞日:1999・12・30(金・晴)
映画館:銀座シネマスウィッチ2
チケット:1800円
文 圓窓

[アイラブユー]を見終わって、1時頃。銀座ライオンで腹に物を入れて、さて。この
まま帰宅するのももったいない。なにがもったいないかは、想像にまかせますが……。
 情報誌を開くと、洋画[エイミー]が目についた。2時30分上映だから、タイミング
はいい。
 その少女は幼児の頃に受けたショックから、耳、声に障害が現われ、苦労を続けてき
たが、隣人の歌には反応を示し、ついには歌うことによって会話ができるようになる、
という感動物。
 午前中の映画と同じ障害を持つ者が主人公になっているのだが、映画としてはこの洋
画に軍配を上げざるをえない。
[エイミー]は冷ややかな隣人たちばかりでなく、あるときははっきりと罵倒を浴びせ
る人々をもを生々しく描いており、それが最後には協力して歌いながら行方不明になっ
た少女を捜すといクライマックスを迎える。そのドラマチックさは巧い。それがスケー
ルの大きさ、彫りの深さをも感じさせる。
 そこへいくと、[アイラブユー]は家族、身内で固まって、[アイラブユー]という
映画を制作しました、というように思えなくもない。寅さん映画の流れがここでも感じ
るのはあたしだけだろうか。[アイラブユー]を他の日本映画と比べたときには熱い拍
手は送れるが、[エイミー]とではその差は大きい。
 真似や応用だけでなく、真に新しい発想を持った日本映画人の登場を望みたい。
 なんて、生意気なことを書いたけど、読み流しておくれ。(笑)
2000.1.10 UP


 『アイ ラブ ユー』

(1999年 日本製作)
観賞日:1999・12・30(金・晴)
映画館:銀座シネチカ2
     協力チケット:1200円
文 圓窓

 窓門会会員の清女さんの推薦の映画。清女さんは多趣味で手話の勉強もしている。制
作から上映までずべて手作りという感じの映画で、あたしも清女さんから協力券という
チケットを買って、暮れでも暇なので出かけた。
 銀座シネチカ2。11時と13時の2回の上映のあと、普通の封切り映画が上映され
るという。我々の世界でいう、早朝寄席と方式か。
 客は少なく、音が出なかったり、フィルムが切れたりで、その度に後方から女の肉声
の「しばらくお待ちください」が聞こえてくるという、場末の小屋を思い出させてくれ
て、苦笑を重ねたが、作品はなかなかどうして、日本映画の中ではいいほうであろう。
国産の映画はほとんど見ないあたしが、こんなことを言うのは失礼かもしれないが、間
違ってはいなかろう。
 聾唖者と健聴者とがどう理解し合うか。大事なことを巧く結び、飽きさせずに聾唖演
劇を成功させる流れは、娯楽映画としての要素も加わっており、楽しませてくれる。
 ときどき、清女さんから手話を教わるので、知っているそれが出てくると、頷いたり
して……。
2000.1.10 UP



 『海の上のピアニスト』

(1999年 イタリヤ制作)
観賞日:1999・12・23(木・天皇誕生日・晴れ)
映画館:新宿アカデミー3
 デスカウントチケット:1600円
文 圓窓

 太平洋を往復する船の上で生まれ、一度も陸へ上がったことのないピアニストの伝説
を、見事なまでに楽しさと感動と涙で綴った映画。
 現実と回想を交互に写すという方式なんですが、煩わしさは感じない。それが、まさ
に目の前の人の話を聞いている状態をも感じさせるという、憎い、「交互」なんです。
 ストーリーの組み立ては見事で、緻密でいて、それが、無理でなく(創作落語[胸の
肉]と比べて(笑))、じわじわ、じわじわと涙が出てきて仕方ないのです。
最初のうちは、手でそれを拭ってましたが、終いには手放しで、声は立てませんでした
が、腹の中でおいおいと泣きました。見終わって、暫時、席から立てず、しばらくは涙
の止まるまで、ここにいようかと思ったほどです。
 今でもこうして、キーを叩いていると、涙が……。

 ジャズの楽しさもあるし、笑える場面もあるし、また、映画の面白さをも発揮して、
ピアノ演奏の決闘なんて、すごい。

 そのピアニストが、一度、船から陸へあがる決心をしたとき、その理由を、
「海を見たいから」
 友人が、
「?????」
「陸から海を見たくなった」

 こんな台詞で、涙ボロボロですよ。
 結局、それはならなかったことなんですが、
「88という有限の鍵盤の中で己れの無限を出したい」
 と言った主人公に泣いて拍手を送りたい。
 あたしも、恰好良く、
「噺家として、寄席、あるいは高座という有限の中で己れの無限を表現してみたい」
と、思ったりしたくらいです。

 そうそう。下手な役者は一人もでなかったようです。みんないい役者。
 横文字の苦手なあたしも、今日、ティム・ロスという名前を記憶した。


 この映画を観て、創作落語を二本、構想として得た。ありがたい。
1999・12・25 UP



タイタニック』(1998年 アメリカ制作)

      999・05・06 自宅にて、とし松から借りたビデオで見る。
 この映画の前半、海へ身を投げようとするローズを助けるジャックの台詞が気に入っ
た。落語にも身投げを助ける場面はよくあるが、「助けると思って死なしてください」
「両方はできねぇよ」なんてぇのが決まり文句のようになっている。あたしはこのタイ
タニックの名台詞を生かして創作を考えている。その前に、その映画の台詞を記してお
こう。

ジャック「やめろ!」
ローズ「来ないで。ほっといてッ」
ジ「よせ。こっちへ来いよ」
ロ「本気よ。飛ぶわ」
ジ「飛ぶもんか」
ロ「どういうこと…? あたしのことがわかってんの?」
ジ「本気なら飛んでいるはずだ」
ロ「あなたが邪魔なのよ」
ジ「見ぬ振りはできない。飛び込むなら、僕も一緒に」
ロ「馬鹿ね、死ぬわよ」
ジ「泳げる」
ロ「落ちた衝撃で死ぬわよ」
ジ「確かに痛いだろうな。それより心配なのは、水が冷たいことだ」
ロ「どのくらい?」
ジ「氷点下か、その二、三度上…。ウィスコンシン州へ?僕の故郷だ。あそこの冬は寒
 い。子供の頃、親父と一緒に湖に釣りに行った。氷に穴を」
ロ「知ってるわよ」
ジ「失礼。たぶん、君は戸外へ出てないタイプだろうと…。とにかく、一度、氷 が割
 れて水に落ちた。この海の水もあのときの水と同じだ。体中をナイフで刺される感じ。
 息もできず、なにも考えられない。ただ痛みだけだ。だから飛び 込みたくないけど、
 こうなったら仕方ない。こっちへ戻ってくれると、ありが たいんだけど…」
ロ「いかれた人」
ジ「皆によくそう言われる。君だって船の尻にぶる下がってんだ。さぁ、手を僕に…。
 馬鹿はよしな」


恋に落ちたシェークスピア』(1999年アメリカ制作)

1999・05・09 渋谷東急にて見る。
                
 シェークスピアの作品を読んだのはいつだったか。噺家になってから読んだはずだか
ら、二つ目になった頃だろう。福田恒存訳で三作品ほど目を通したが、まるっきりわか
らず、その後、一冊も読んでなかった。ところが、この映画の面白さから目覚めて、一
から読み始めてみて、いくらか、わかった。面白い。
 演劇関係者から、小田島雄志訳を薦められたので、近くの区立図書館で借りて少しず
つ読破している。シェークスピアがこれほどまでに駄洒落好きだったとは。英語の駄洒
落をそのまま日本語に訳せるわけないことは承知してても、腹は一向に立たず、嬉しさ
ばかりが残るのはなぜなんだろう。訳の小田島氏のセンスなのか。聞くところによると、
小田島氏は落語が好きで紀伊国屋ホールに聞きにきてたとか。なおさら、嬉しい。 全
作品を読むつもりだ。
 洒落ークスピア万歳!


刑法39条』(1999年 日本制作)

1999・06・25 新宿ピカリデー4で見る。1600円。
          
実はこの映画を見る、二、三日前に友人から本が送られてきました。
 その友とは、高校時代の同級生で成績期順でいうと、あたしの後に着いて卒業した男。
ラストの一、二を争った仲でもある。彼は漫画家の永井豪の実兄にあたる。「やっと書
き上げた本、読んでください。映画にもなっているから、次いでに見てよ」 てな、わ
けで、新宿末広亭に入る前に、ピカデリー4へ。その映画館の下が安券売りの店で、1
700円のところを1600円でチケットを買う。
 その映画とは、「刑法39条」。
 正直いって、疲れました。なぜって、全役者の台詞が、みな、つぶやくような低い、
一本調子の口調。法廷関連者って、みんな、ああも陰気なのだろうか。だとしても、そ
れをそのままリアルに描いたら、鑑賞者は辛いよ。現に、役者の口から発せられるキー
ワードになるような、人名、地名が頭にインプットされにくく、おまけに回想場面が多
いから、なおのこと。筋の矛盾個所もあるし、その疲労度は増加する。あたしは、貰っ
た本を読んで行ったので、なんとか筋は解ったが、難解と感じた観客もだいぶいたはず
だ。
 この監督の森田芳光は落語好きのようで、最初の作品は[のようなもの]。落語的な
タイトルで世に出た人。あたしの映画見物は今年五月からなので、その作品は見ていな
い。いずれ、見よう。


visonsサイキックコップ』

1999・06・25 自宅にて、WOWOWで見る。
           
 人間の超能力をコンピュータに組み入れようというテーマ。咄家で超能力を信じてい
る者はあんまりいない。でも、仲間内のポーカーで勝つ者はほとんど決まっているとこ
ろをみると、カードを読むという能力、超は付かなくとも、すごい。小勝、伯楽などは
最強者。
 

『新 明日に向かって撃て』(1979年 アメリカ制作)

1999・06・25 自宅/WOWOWにて
          
 ユーモアを交えた作品だが笑えるところまでいかないし、ストーリー自体に新鮮味が
なくて退屈。我慢して見る映画、ということは、平凡な落語と同じ。
               

『メッセージ イン ア ボトル』(1999年 アメリカ制作)

1999・06・25 新宿ピカリデー2で見る。
              
 浜辺に打ち上げられたビンの中の手紙の主を割り出すのがきっかけで、都会の女と漁
村の男が惚れ合って、という次第で、言わば、単純なストーリーだが、ユーモアと怒り
と涙があって、飽きさせないのがいい。思うに、恋人の死別という悲惨なドラマは落語
にはあまりない。[立ち切れ]ぐらいか。父親役のポール ニューマンがいい男すぎて、
ついつい見とれちゃう。本のベストセラーの映画化らしいが、あまり客は入っていなか
った。