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珈琲三昧

富士コーヒー/ドトールコーヒー

 

最新「 圓窓の珈琲小咄 」

フジコーヒーニュース(名古屋・富士コーヒー梶jに連載中
www.ijockey.net で(その001〜)配信中
www.ensou-dakudaku.net/hall/caffe.htm に(その001〜)掲載中
「圓窓五百珈琲小咄を読む本」発売中

その635『コーヒーと石油の違い』   2006・10月号
 コーヒー豆の卸し業が二人で真面目に話し合っている。
「コーヒーは世界的にも石油に次いで貿易規模が大きい一次産品なんだ」
「へぇー!」
「だから経済上も重要視されている産物なんだよ」
「ほー!」
「石油の取り合いで戦争になるけど、コーヒーが原因では戦争はないよね」
「なるほど……」
「その理由は、石油は自動車を動かすけど、コーヒーでは自動車は動かないからさ」
「それで、わかった」
「なにが?」。
「こないだコーヒー豆を運ぼうとして、車に載せたんだが、車が動かなくなってさ」
「それは故障したんだろう?」
「いや、胡椒じゃない、コーヒーさ」

その634『カップの中』   2006・10月号
 寄席の近くの喫茶店に落語家の若手が入ってきた。テーブルに着くと、右斜めのテ
ーブルに座っている人と目が合った。
 どっかで見たことのある顔だが……、誰だったか……。コーヒーを飲み終えて、や
っと思い出した。寄席の近くのビルの入口の引っ込んだ所へ、夜になると出張ってく
る易者だった。変わったコーヒー占いもやると聞いている。
 落語家は自分の飲み終えたコーヒーカップを持って、その側へ行った。
「あの……、あたしは落語家なんですが、ここであたしの将来を見てもらえますか?」
「見ましょう」
 易者はそのカップの底のコーヒーの残滓を見ながら言った。
「あなたは落語家を廃業したほうが……」
「飲み終えたコーヒーで、そんなことまでわかるんですか?」
「先日、寄席へ行った時、あなたの落語を聞きましたので……」

その633『おしぼりハンカチ』   2006・9月号
 夏の全国高校野球大会は早稲田実業の初優勝で幕を閉じた。
 そして、盛り上げたのが早実のピッチャー斉藤君のマウンドで汗を拭った青いハン
カチであった。
 それも、きれいにきちんと畳まれたハンカチだったのでなおさら話題になった。と
りわけ、女の子たちはキャアー、キャアーと騒ぎ立てた。
「あのハンカチ、欲しい!」
「ハンカチになりたぁい!」
「結婚して!」

 A子もその一人だった。
 早速、早実のある国分寺市へ出かけて、学校を見て、街をぶらついた。
 少し疲れてきたので、喫茶店に入ってコーヒーを注文した。
 まず、運ばれてきたおしぼりを見ておどろいた。
 丸めたおしぼりではなかった。
 斉藤式にきれいに畳まれた青いおしぼりだった

その632『歌舞伎を見て』   2006・9月号
「こないだ、生まれて初めて歌舞伎を見に行ったよ」
「どうだった?」
「見ているうちに、コーヒーを飲みたくなってさ」
「コーヒーを?」
「舞台に出てくる役者が『喫茶だ、喫茶だって』言うんだよ。だから、その度にこっ
ちはコーヒーを飲みたくなってさ」
「へ……?」
「それも一人じゃないんだよ。全部で三人なんだよ」
「三人も……?」
「三人が『喫茶、喫茶』てんだ。飲みたくなるだろう」
「台詞は?」
「確か……『月も朧に白魚のぅ』なんて言ってたかなぁ……」
「それは有名な歌舞伎で三人吉三(さんにんきっさ)だ」

その631『怖い話を聞いて』   2006・8月号
 ある喫茶店で「怪談話を聞く会」が催された。店内には寄席のように高座も造られ
ている。
 出演するのは、若手の落語家。
 出し物は小泉八雲の作品で有名になった「雪女」。この元は昔話で各地に同じよう
な話もあるようだ。
 時間がくると、お客にホットコーヒーが配られて、それを飲みながら聞いてくださ
い、という企画。
 落語家が高座に登場して、マクラで笑わせながら、徐々に怖そうな話題にもってい
き、いよいよ本題の「雪女」に入った。
 場内はシーンとなって、みんなが聞き込んでいる様子。
 終った途端に緊張がほぐれたような溜息があちこちに伝わったようだ。
「怖かったわ」
「ほんとね。身動きができなかったわ」
「体が凍りついたようだったわ」
「コーヒーもホットがアイスになってるよ」

その630『オーストラリア』   2006・8月号
 ある喫茶店に入ってきた若い男女。コーヒーを飲みながら、なにやら言い合ってい
る。
 どうやら、新婚旅行をどこにしようか、と揉め出したようだ。
「あたしはオーストラリアに行きたいなぁ」
「オーストリア?」
「違うわよ。それはヨーロッパでしょう。あたしの言うのはオーストラリア」
「ああ、南半球か?」
「いや?」
「うん…。あそことはサッカーで負けたしな」
「サッカーは関係ないわよ」 「それに女子サッカーもオーストラリアに負けたんだ
ぞ」
「関係ないわよ」
「あるさ。気分が悪くなるからさ」
「弱いからよ」

 離れたところで聞いていたマスターがつぶやいた。
「オーストラリアのことになると、コーヒーと同じだ。男が一杯(敗)、女も一杯(
敗)」
2006.10.9 UP