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圓窓師匠 桐朋短大演劇科特別講義
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1999・12・18 午後 桐朋学園短大演劇科・階段教室 文 桐朋OB 二口 真規子 |
寒さも一段落した12月18日。 私は昔、通い慣れた仙川の駅を出て、母校に向かっていました。 「あなたの母校の桐朋で特別講義をやるよ」と師匠からお電話をいただき、それは見 逃してはならないと、わくわくした気持ちで久しぶりの校門をくぐり、学生たちにま ぎれて(まぎれてなかったかもしれないけど……)、階段教室に入りました。 桐朋学園演劇科の階段教室では、昔からそういった面白い講義が聞けるのです。 その世界で一流の方の話がナマで聞けるこの講義が、私は学生の頃から大好きでし た。 落語は見るものではなくて、聞くもの。 今の20才の子は産まれたときからテレビ見てるでしょう。 ”見て”育った人に「20才になったんだから、人の話を聞きなさい」って言ったっ て、そりゃあ、無理でしょう。 人間は毎日毎日ぼんやり見てる、テレビをね。 脳細胞に刺激を与えなくたって「あ〜わかった」って思わせるテレビ、これは危険 です。 いてもしょうがないと判断した脳細胞はなくなるんですよ。 話芸、何がありますか? 浪曲、講談、漫才もそうですね。 そして落語。 では、落語より古い、一番古い話芸はなんでしょう。 そうです、それは”昔咄”です。民話です。 おばあさんが、いろりばたで、たきぎを手にしながら 「むかし、むかし。あるところに、おじいさんと、おばあさんが……」 ね、いい加減でしょ。 いつ、どこで、だれが、ぜんぜんわからない。 だからね、聞いてる子供が自分で設定しなくちゃいけない。 「話を聞いて、自分で描く」 これはね、本当に大切なことなんです。 来年の小学校4年生の教科書に、私の落語[ぞろぞろ]というのが載るんです。 私は昔から言ってたんです。 授業に落語を取り入れるべきだって。 だから、教えに通っているんです、小学校に。 これ、分かる人。 はい、あなた。 名前、なんていうの? おぐら かおりさん? ……、「小倉アイスが香る」って覚えれば、いいよね。 先生ってことば、あるでしょ。 先に生まれると書いて、先生って言うって、よく言いますね。 「先ず、生きてる」って言う人もいる。 最近では「先に生えてる」なんてね……。 あれ、手たたいて笑ってるね。 学生たちを巻き込みながら、師匠の快進撃は続きました。 講義の終了の時間がきて、その[ぞろぞろ]は聞くことができないのかな、聞きた いなあ。 小学生はいいなあ、聞けるんだなあ……、と、あきらめかけた時、 「じゃ、ちょっと、やってみましょうか」 私も学生たちも、もう拍手喝采の大喜び。 担当の先生が「危ない」と止めるのも聞かず、折りたたみ机を二つあわせて、大丈 夫かどうか、まず学生に乗らせた後、師匠がその机にヨッコラセと座りました。その とたん、なんと一瞬にして、そこは高座。 桐朋学園の階段教室は、”寄席”になりました。 [ぞろぞろ]はとっても面白いお話。 次はどうなるのだろう、どうなっちゃうんだろうと、まるで小学4年生になったよ うに、みんなゲラゲラ笑いながら、引き込まれていきます。 ”る”ことができて、”考える”ことができて、”感じる”ことができた授業でした。 学生たちが、師匠をどんどん好きになっていったのがわかりました。 再びの爆笑と拍手喝采の中、特別講義はお開きとなりました。 とっても幸せな授業でした。 もし、機会があったら、師匠の授業に忍び込むことをおすすめします。 ちょっと、珍しい、素敵な授業が受けられること、保証します。 |
2006・4・22 UP |