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一九九九年九月五日2限 午前10時半 日本大学芸術学部所沢校舎308番教室 |
[落語の中の江戸風俗論」見聞読 |
文 高田なな |
高田、走って息切れしながら、二分遅刻で席に着く。 すでに教室にいらっしゃった柳澤先生、レポートの返事を生徒に手渡している。 教室内の暖房が入っているかのような暖かさに、高田、上着を脱ぐ。 今日の特別講師「圓窓先生」についての説明も終わり、生徒にアンケートをとったりし て、柳澤先生の話もだんだん漫談調になってきたところで、三遊亭圓窓先生の登場。 教室内は「待ってました!」とばかりの嵐のような拍手。 中央に用意された高座を挟んで、下手側の教卓に圓窓先生、上手側に柳澤先生というカ タチになる。 このカタチをベースに、柳澤先生が質問をして、圓窓先生が答えるというカンジの授業、 いよいよ開始。 内容は、落語のビジュアルから進んで行く。 <上下(かみしも)のこと> 「落語は演劇の一部だとあたしは思っている」の名文句から始まり、落語の登場人物の 演じ分けのテクニック、上下についてのお話。上下とは一人で演ずる落語の大事なテクニ ックで、演者の首の左右、あるいは上下の振り分けによって登場人物の位置を現すことを いう。 一般的に言われているような、身分による固定された上下の振り方は間違いで、登場人 物の位置が上下を決定し、例えば、熊五郎が大家の家を訪ねる場合、芝居の舞台を想定し て、花道が道、下手が玄関、上手が裏口という装置を組み立てる、とおっしゃっていたの は勉強になった。 けど、他の生徒は歌舞伎を見たことがあるのか心配だった。 <扇子のこと> 落語をする時に使う小道具の一つ。 扇子の場合は、何に変身するのかを例にあげて(刀、槍、箸、筆など)、実際にしぐさ をしながらの説明。 この頃から、一番前に座っている2人の男子が授業に目立って参加してくる様になる。 <手拭いのこと> 手拭いも、扇子の時のように説明(本、紙、財布などに変身)をする。 扇子を風、手拭いを曼荼羅といい、仏教と落語は密接している。 なぜ、曼荼羅というのかと言うと、「曼荼羅に描かれた全宇宙のように、手拭いでなん でも表わされるから」と、おっしゃっていたが、扇子のほうが手拭いよりも数多く変化す るので、いっそ扇子を曼荼羅にしたほうが、いいんではないかと、高田は、思ったりした。 <入門のこと> これは、高田もリクエストをしていた質問事項だが、前座の裏話を聞けてナカナカ面白 かった。 このお話に触発されて、門を叩く日芸生がこの瞬間、育ったかも…、知れない…。 前座の修業の一つ、礼儀作法については、高田も花嫁修業として前座体験するのもいい かも…、と思った。 ここから、柳澤先生はマイクをおもむろに外し、生徒と同じように席に着く。 圓窓先生の額から汗が流れ出てきている。暑そうだ。 そして、チョークを取り出して、講義を始めた圓窓先生。落語家も字を書くことを目撃 し、その漢字にとまどう。 <話芸のこと> 圓窓先生の「落語は話芸ですが、ほかにどんな話芸があるか知っている人」の質問に、 「狂言」と答える生徒あり。学生の、知識の安易さにちょっとショック。でも、誰も答え ないより、ま、いっか…。 話は講談へと移り、落語と講談の違いを説明したが、講談を聞いた事のある生徒がいな い…。日本の話芸、行き詰まる…、を実感す。 <聞くということ> テレビの功罪について、聞くことの大切さについてのお話に入る。 確かに、目から入る情報ばかりの昨今、聞いて想像するということをしていなさ過ぎる と思う。 話の中で「江戸時代の人は想像力が豊か。現代人はその能力が衰えている」とおっしゃ った。 また「落語は見に行くものではなく、聞きに行くものである」と、改めて言われて、ド キッとした生徒も多いはず。 <小学四年生の教科書に載る落語[ぞろぞろ]の口演> 授業開始前に[ぞろぞろ]掲載の教科書を生徒に回覧させたらしいが、高田は遅刻した ため、見ていない。 圓窓先生は中央の特設高座に移り、講義の続きをまだ話していると、無情にもチャイム が鳴る。 しかし、圓窓先生は気づいているのか、いないのか。始めた落語[ぞろぞろ]をそのま ま続ける。 生徒も授業後は昼休みなので、ほとんど教室に残りの噺を聞く。生落語の初体験の生徒 が多い中、けっこうウケがいい。約20分も授業がオーバーしたにもかかわらず、みんな 文句一つたれていない。 高田のように、落語を聞いて体中に電気を走らせた人がいそうである。しめしめである。 そして、圓窓先生へ割れんばかりの拍手で授業は終了。 やや遅刻した高田は、やや遅れて出席表をいただき、出す。 柳澤先生いつも申し訳ありません。 教科書を見せてもらう。高座の写真も複数あって、嬉しくなる。 圓窓先生、今日はありがとうございました。 |
演劇学科四年 高田なな 1999・10・19 UP |