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芝居三昧

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一般演劇

1999/10/19(火)ひとり芝居『山椒大夫考』京楽座
  
出演:中西和久   
作・演出:ふじたあさや
  音楽:平井澄子   
  琵琶:田原順子   
  会場:シアターX  
   
 中西和久さんのひとり芝居は何度も観てきたが、いやぁ、唄と三味線、巧くなったこと。
演者としてその分、ほかの部分にも思案が配分されるのか、観客としては安心して楽しめ
るようになったのは、あたし一人ではあるまい。
 終わってロビーに出ると、演出のふじた先生が帰るお客さん一人ひとりへ礼を言ってい
るので、そばへ行って、小さな声でそのことを言うと、
「当人に言ってやってください」
 と、嬉しそうな顔。
 ちょうど、彼がそばで、一人ひとりに挨拶をしていた。
 あれ…? 背が高くなったなぁ、と思ったら、お立ち台に立っているではないか。
 彼の背は、160センチはないだろう。でも、舞台では大きく見えるから不思議だ。芸
の力が体をも大きく見せているに違いない。
 そのお立ち台の彼に、巧くなっていることを言った。
 彼は、汗の流れ落ちる顔をそのままに、
「やぁ、外しちゃって」
 と、照れてみせた。
「名人だってミスするさ。トータルでよければ、いいんですよ。あまり巧くならないでよ、
遠くの人になってしまうから」
 と冗談を言って、別れる。
 偶然、客席で一緒になった楽之介を誘って、シアターXの隣のデニーズで食事。
圓 窓「この本を書いたふじた先生は、若いとき、狂言にカルチャーショックを受けた人
   で、作品にもそれが現れているんだ」
楽之介「動きも狂言師のようでした」
圓 窓「中西さんのひとり芝居は、落語でいうと地噺だ」
楽之介「でも、動きがあるんですから、歳をとったらできませんね」
圓 窓「そうなっても、座って釈台を置いて、立ち振る舞いなしでも、ちゃんと出来る人
   だろうな、中西さんは」
楽之介「でもすごい。一人で日本の芸能を一遍に演るんですもの」
圓 窓「中西さんはけして器用な人じゃないと思う。人一倍どころか二倍、三倍も稽古の
   好きな人間なんだろうな」 楽之介「噺家にはいないタイプですね」
楽之介「そんなことありませんよ、師匠」
圓 窓「わかってんならいい。そのつもりでいると困るからな」(笑)
楽之介「落語には山椒大夫はありませんね」
圓 窓「あまりにも悲劇過ぎて、無理なんだろう。でも、創って演ってみたいな。」

 圓楽一門の者とゆっくり話ができるなんて、そう滅多にない。
 それにしても、男同士、二人っきりの食事……、つまらないこと夥しい。

                             
1999/08/24(木) 『CHILD』 企画ユニットRAGS・PARTY  vol.1 制作
出演:村田雄浩 石橋保 小野寺丈
                        会場:中野ザ・ポケット
小野寺丈さんの芝居は久し振りに見ることになる。
 二軒の夜席を早上がりして、中野駅下車して、南口へ。
 なんと、光やら、降るやら、吹くやら。天はなにに怒りをぶつけているのだろうか、そ
んなに地上が憎いのか、ものすごい雷雨。傘は持参しているが、路上に飛び出す勇気はな
い。駅舎の軒先で(こう書くと駅が小さいみたいだが)雨宿り。二十分待ったが、止みっ
こなし。開演時間の七時半に遅れそう。意を決して、傘を半開き。落語の[仲蔵]を気取
って、ツツツツツッと雨の中に突っ込んで行った。
 飛び出したまではよかったが、道がわからない。一度、行っている会場だが、もう忘れ
ている。コンビニの前の公衆電話の脇で、鞄からチラシを捜し出して、地図を見ようとし
たが、字が小さすぎて、読めない。傘の骨は二本折れて、頭からずぶ濡れ。髪の毛も薄く
なっているから、雨は容赦なく頭部の地膚を直撃するように打つ。
「丈さんよ。なんだって、こんな日に芝居をするんだ。いくら、招待されたって、これじゃ
ぁ……」
 腹の中でもう一人の俺が愚痴ること、愚痴ること。
「傘はこっちが買わなくちゃならないし」
 なにしろ、出掛けに傘を持ったら、女房から「それはあたしの傘!」と怒鳴られた因縁
のある代物だ。そいつを壊したんだから、ただじゃすまないだろう。どうしてくれるんだ、
丈さんよ。

 企画ユニット ラグス・パーティーの第一回作品とチラシに書いてある。
 この[チャイルド]は丈さんの作なのだろう。舞台はほとんど煙が漂っていて、突然、
暗闇に傘が回り出し、物語はタイムスリップしたようなので、これは間違いなく丈さんの
本だ。
 あたしゃ、もう、丈さんの癖は掴んでいる。だまされないぞ、丈さん。

 この丈さん。この秋、めでたく結婚をする。芝居ではなく、実生活の上で。あたしはそ
の司会を頼まれている。
「丈さんのことだから、披露宴でも、煙を出すんでしょう。次いでに、誰かが傘をまわし
て。そして、友人の誰かが丈さんの過去を暴くという、タイムスリップに持っていくんで
しょう」
 と、こんなことを丈さんに言いたい。

 肝心の芝居ですが…、まぁ、いいでしょう、この際、芝居は……。
1999/07/02『ベルナルダ・アルバの家』遊戯空間公演 新馬場の六行会ホール
ロルカ作 篠本賢一 演出
外国作品は見慣れぬこともあってくたびれるが、このスペインの芝居はなかなかどうし
て、出演者は女だけであったが、見応えがあった。声はみな幅があり、安定感もあり、好
感持てた。「女だから」と許される部分を持ちながらの芸は持たないと言われる。それを感
じさせないのがいい。女の寄席芸人もこの芝居を見ると参考になろう。