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 窓門会文庫

落語と狂言の交わり江戸落語風俗抄落語の中の古文問答カル日記噺のような話落語の中の江戸生活学まるがお通信 | 弥助のギリシア教育論



窓門会会員 作家  弥 助

その1・言いわけの巻

 これから何回かにわけて、つれづれなるままに書いてみようと思います。
 もの書きというものはたいていわがままで、締め切りがあるとか何とかいうことで
ないと、仕事をいたしません。
 ただし例外がありまして、親愛なる方に自分の気持ちを素直に表したいというとき
には、読む方の意向を無視して、勝手に書いてしまうものでございます。
 そういうわけで、これをお読みになる方には大変お気の毒さまではございますが、
よろしかったら最後までお付き合いくださいませ。
                      2001(平成13)年7月21日

短波放送に 人生を変えられた!!

 そもそも、函館に行こうという、それも仕事ではなく遊びでということになります
と、関東に住む人間にしてみれば、なかなかの大事業でございます。
 金もかかれば暇もかかる。まあ、暇のほうはといいますと、これは、その、正業を
持たない身といたしましては、何とか都合がつこうという。
 ところが、軍資金のほうはといいますと、これはどうして大変なことで。


 東京から西へ向かう、これは、一日2250円ナリの青春18切符というものがご
ざいまして、鈍行列車に揺られてトコトコと行けば、たいしてお金のかかるものでは
ないのです。
 ご案内の「大垣夜行」を利用しますと、夜、東京を発って次の日の朝10時に京都
駅に到着いたします。
 ところが、東京から北へ向かうとなると、これがなかなか大変で。東北線には手ご
ろな夜行がございません。新潟夜行に乗って日本海側を奥羽線回りで行くという手も
ありますが、北海道まで片道車中2泊かかりまして、くたぶれもするし、青春18を
使うにいたしましても3枚かかりますから、意外とお金がかかります。
 どうせお金がかかるのなら、いっそ豪華に北斗星で、と思って交通公社にいる友人、
山口君を訪ねました。
 すると、空席があるというではないですか!!!。しかも二人ぶん。
 とりあえずそれを買い占めまして、あとは誰かを誘おうという。


 ところで、買い占めに必要な軍資金はどこから出てきたのかと申しますと、これが
なかなか大変で。秘密の場所にいって秘密のお金を調達してこなくてはなりません。
 ひとくちに東京と申しましても広うございまして、新宿から京王線で西に向かいま
すと、一面、緑におおわれた所がございます。
 これはお祭り広場でありまして、毎週土日の縁日で、数字を二つ唱えますと、時々
ご利益があるのでございます。
 早い話が、競馬。(笑)


 わたしが高校生のころ、今はなくなりましたが、「大学受験ラジオ講座」というの
を短波放送でやっていたんです。で、毎晩聞いておりました。
「らじおたんぱ」というのは、夜はお堅い放送ばかりなんです。電気技師や不動産関
係などの各種試験のための受験講座をやっていてね。
 ただし、昼間は違います。平日は株、土日は競馬と、ばくちの情報ばかりやってお
ります(笑)。
    なにげなくタンパ聞いたが身の因果  弥助
 日曜の昼間に、それとはなしにつけてみた短波放送で、目覚めてしまいました。(笑)
 競馬の実況中継というのは、言葉をつかった仕事の中でもかなり高度な芸術だと思
っています。機会があったら聴いてみてください。
 スタートしてからゴールまで、基本的に馬の名前と番号しか言わないのですよ。そ
れでいて、名アナウンサーは聞き手に感動を与える。これはすごいことです。レスト
ランのメニューを読み上げるだけで泣かせる、という芸。うわさには聞きますが、こ
れに匹敵する価値があると思います。


 さて、この話はもう少し続くのですが、あまり長くなりましたので、ちょっと一息、
またつとめます。
                 

  読者の「無銭」より
     納得、はやい馬を当てたのね。
     それで函館かぁ、帰りの費用は現地調達ね。(笑)
     それとも、浦河に立ち寄って馬主になったとか。
          

その2・さらなる言いわけの巻

 無銭さんさっそくのつっこみ、ありがとうございます。
 言いわけがましいことが続き、なかなか本題に入りませんが、旅立つ前というのも
旅の楽しみの一つでございますので、どうかご辛抱のほどを願いまして。

大穴の時期を 狙いましょう!!

 高校生のとき競馬の中継をたまたまラジオで聞いた私は、実況のアナウンスに心を
動かされまして、たびたびラジオを聞くようになりました。
 当時はオグリキャップの全盛時代、競馬ブームが起こった時期です。
 ただ、その頃は、自分で馬券を買うということはなかったです。まあ、まだ高校生
だったから、ということもありましょうが。


 大学受験が終わって、ラジオ講座を聞かなくなると同時に、いつしか競馬中継も聞
かなくなってしまって、しばらくのあいだ遠ざかっていたのです。
 ところが、大学2年のとき、京都に旅行して、友人の家に泊めてもらったとき、京
都競馬に行ってみよう、ということになったのです。
 ある程度の予備知識は持っていたものの、競馬場へ行くのは初めてだったので少し
緊張しました。
 そのとき初めて馬券も買ってみましたが、たいして勝ちも負けもせず、競馬場とい
うのはこういうものか、という雰囲気を味わいに行ったようなものです。


 それからまた空白期間がありまして、その頃はマージャンに夢中で、毎夜のように
打っていたのですが、あるとき、たいていは徹夜になってしまうマージャンは健康上
よくないと思い、昼間の遊びである競馬に宗旨変えをいたしました。
 高校のときの担任の先生が競馬のプロで、年にウン百万円儲けている人で、そこに
弟子入りして、すこし修行をいたしました。(笑)
 ばくちというのは、人生を破滅させる危険があるので、いろいろと自分と約束して
おかなくてはなりません。よい先生につくことができたので、遊びとして競馬を楽し
むことができるようになりましたが、そこに至るまでの修行はハードでした。(笑)


 そういうわけで、一年に何回かは、わずかの元手で大穴を当てることがあるのです。
 大穴が出るのは決まって6月なんです。それで、去年から、梅雨のじめじめした時
期に、さわやかな函館に行くということを年中行事にするようになりました。
 もちろん、東京競馬が終わって函館競馬が始まるということも理由の一つではある
のですが。(笑)
 で、今年も6月に予想通り大穴が出まして、当たりまして(笑)、北斗星の切符を
手にすることができました。
 ただ、今年は2枚切符を買ってしまったので、まあ、払い戻してもよいのですが、
せっかく取れたのだから誰かを誘おうと思いまして、ひまそうな人にあたりをつけて
みると、通称親方と呼ばれている人が休みを取れるということがわかりました。
 この人は地方公務員で、有給がいっぱいあって、消化しなくてはならないという、
非常に虫のよい人です。(笑)
 世間にはこういう仕事もあるのかと私が苦情をいうと、虫のよいのはどっちなのか
と切り返されるので困ったものですが。(笑)
  夏空に遊びの虫の羽が伸び  弥助  


「親方」というあだ名の由来は、落語の[花筏]からきています。
 病気で太っているという、それだけの理由ですが。(笑)
 べつに子分も何もいやしない。私より3つ年下です。


 さて、そういうわけで、軍資金と同道者の見つかった旅がどのようになりましたか、
一息ついてから申し上げます。
          

その3・出立の巻

 今回はいよいよ出立の巻です。
 がんばって書きますので、最後までお付き合いください。

漫画とは 長ぁく付き合うべし!!

 切符を手に入れ、同道者が見つかったことで、旅の支度を始めました。
 正確にいうと、始めようとして、いつもの旅行かばんを探し始めたんです。ところ
が、どこを探してもない。この前、使ったのが、たしか3月の名古屋旅行だったかな
と、いろいろ思い出していたのですが見つからない。
 そういえば、整理タンスを母親が2、3日前に掃除をしていたのを思い出したので
聞いてみると、「古そうなかばんだから、捨てようと思って外に出してある」とのこ
と。
あわてて外に出てみると、私のかばんがありました。(笑)
 年に数回しか使わないのだから、まだまだ元気です。たしか、高校の修学旅行のと
きに買ったので、今年で13回忌、いや、13年目。古くはなっていますけど、使え
る。
 最近、親が「捨てる技術」などという本を読んでいるせいか、家の中のものがどん
どんなくなっていくという、不思議な現象が起きております。(笑)
 なんとか、捨てられなくてよかった。
 で、服を詰め込んで、そのほか持っていく物、といってもたいしたものはありませ
んので、荷物をまとめて、高崎線の籠原からが旅の始まりでございます。


 ときに、2001 (平成13年) 年7月5日(木曜))の夕方。
 とりあえず上野に午後4時頃ついて、行きつけのマンガ喫茶にて熱いコーヒーを、
まあ、そんなに熱くなかったですけど、とりあえず飲んで、それから2時間半は喫茶
店で本を読みながら過ごして、今年は北斗星に乗り遅れないぞという、決意を新たに
いたしました。(笑)去年は大変だったんですから。(笑)
 この、マンガ喫茶というのは、と、また脱線してしまいますが、非常に便利でよく
使ってます。
 ご案内のとおり、普通の喫茶店だと、コーヒーを頼んでタバコを吸って、30分を
過ぎたあたりからだんだんと雲行きが怪しくなり、水を取り替えにきたり、器をさげ
に来たりして、あまり長居をするわけにまいりません。
 なにしろ、私は気が弱いものですから。(笑)
 で、何か追加して頼んだりして、お金を使うだけでなく気を使ってしまいます。
 その点マンガ喫茶というのは、時間制ですから、一時間200円払っていれば、何
時間いてもかまわない。店の人も、長くいてほしいからうるさいことは言わない。
 ソファーが置いてあったり照明を工夫してあったりして、すこぶる快適な状況です。
 コンピューターが置いてあって、インターネット使い放題という店もあります。
 上野の駅前は若干料金が高いですけど。暑い日なぞは、ごった返している図書館で
勉強しているよりも、気分転換に何時間かマンガ喫茶に行く、ということがよくあり
ます。金を払っているのでみんな必死になってマンガを読んでますから、たいてい静
かですし。
    暑中には書中にもぐる所を探し  弥助


 北斗星は19時3分の発車ということで、マンガ喫茶を6時半に出発し13番線の
ホームへと向かいましたところでどうなりましたか、長くなりましたので、ちょっと
一息。
 またつとめます。
          

その4・北斗星の巻

 鉄道旅行のことですので、どうしても脱線が多くなりますが、がんばってつとめま
すので、どうぞ最後までご辛抱ください。
 今回はいよいよ上野駅を出発するところからです。

宇都宮から 乗り込んだ人!!

 北斗星という、これは日本の鉄道の中でも豪華な列車の一つでございます。
 食堂車、シャワー室、ロビーカーなど、普通の列車にはついていない設備がいろい
ろございまして、上野から札幌までを約20時間で結んでおります。
 私の乗る北斗星3号は上野発19時3分、函館には翌朝6時34分に到着いたしま
す。約11時間半。
 で、私はマンガ喫茶を出て、6時半ごろに上野駅の改札をくぐりました。


 北斗星の発車する13番線には、18時39分発の高崎線籠原行きの普通電車が出
発を待っております。いつもならこの電車で帰るところですので、間違えて乗ってし
まうと、家に戻ってしまう。(笑)まぁ、間違えようがないですけどね。
 普段は旅行用のかばんを持って北斗星を待っている人々をうらめしそうに見送る私
ですが、今日は立場が逆転。帰宅途中のサラリーマンや学生の人々のうらやましそう
な視線を感じながら、籠原行きが出て行くのを見ておりました。
 それからまもなく北斗星の入線。私は5号車でした。
 ホームの売店のすぐそばでしたので、タバコとペットボトルのお茶を仕入れておき
ました。お茶は車中に自動販売機があるのですが、タバコは上野を出ると買えないの
で、用心のためにマイルドセブンライトを2個買っておきました。
 ほどなくドアが開きました。
 去年はここで安心して3階の本屋に行ってひどい目にあったので、今回はすぐに乗
車。荷物を自分の寝台においてからロビーカーへと移動します。ロビーカーで弁当を
つかい、茶を飲んでいると、ベルがなったのかどうかわからないうちに出発しており
ました。


 記憶力のよい方は、花筏の親方と呼ばれている、今回の旅の相棒が登場しないのを
心配なさるかもしれません。
 花筏親方は、茨城は下館の焼肉屋のせがれで。
 まぁ、実家の商売は何でもよろしいのですが、上野から乗るよりも宇都宮から乗る
方が便利だということで、途中から合流することになりました。
 そういうわけで、上野から宇都宮までは一人旅です。
 ロビーカーから外を眺めておりますと、赤羽、浦和と帰宅途中の人々でごった返し
ている駅を通過。途中の停車駅は大宮駅だけで、埼玉県から栃木県に入ろうというこ
ろには、だんだんと暗くなってまいります。
 このロビーカーのイスというかソファーというか、これがまたよく揺れるんです。
腰掛けていてあまりにも揺れるので、足に力を入れて踏ん張っているとすぐくたびれ
ちゃう。
 長時間一人が独占しないようにするにはよいのかもしれませんが、このときロビー
カーにいたのは3、4人くらい。実に空いております。昼間の池〇演芸場みたい。(笑)
あっ、夜でもいいか。(笑)
 することもないので、備え付けのビデオで放映していた「釣りバカ日誌」を見てい
ました。そのうちに宇都宮に到着、花筏の親方が乗り込んできました。


 この親方が、私より若いのに落語をはじめ演芸全般に詳しい人で、車中では落語談
義。車中というより、この旅の全般にわたって落語談義をしていました。
 花筏氏は、「この季節だと[青菜]とか[夏の医者]とか、比較的短いけれども季
節を感じさせてくれる噺がいい」というようなことを言っていました。なかなかうる
さい人です。
 ビールを飲みながらの雑談は尽きることなく、白河の関を越えたころにはだいぶで
きあがってしまいました。
    夏の空仕事の後の直しかな  弥助


 ロビーカーも、食堂車でディナーを終えた人々で埋まり、騒がしくなってきたので、
そろそろ自分たちの寝台に戻って休むことにしました。
 福島を過ぎたあたりで、いつも寝る時間から考えるとだいぶ早いのですが、翌朝の
ことを考えて眠りにつきました。


 さてまあ、翌日の旅がどうなりましたことか、だいぶ長くなりましたのでこのあた
りで一息ついて、また改めて申し上げることにいたします。
               00000000
  読者の「圓窓」より
     あなたは苦労人だね。
     あたしのしてないような経験を随分としているね。
     たぶん、あたしより、芸人向きだな、間違いない。
     あたしは、人によっては「面白味のない男だ」そうだ。
          

その5・朝の函館の巻

 苦労人とよんでいただいたの初めてです。
 自分で苦労してきたという自覚がなく、ただ自由気ままに生きてきただけですので、
何と答えたらよいか。
 芸人向きといわれましても、いまさら師匠の門をたたくこともかないません。ただ、
10年早く師匠と出会えていたら、一門に入っていたかもしれませんが。(笑)
 先日のオフ会では、けっこう話をしていたのですが、「黙っている」という苦情も
出ていたようです。
 大勢の前では話しづらいのかもしれません。二人きりになれば話しますよ。(笑)


 今回は寝台特急の旅でしたので、話はどんどん進んでまいります。

他人を寝かさない人が「寝られなかった」だと!!

「トンネルをぬけるとそこは雪国だった」というのは川端康成ですが、それから半世
紀、日本最長トンネルは青函トンネルとなりまして、トンネルを抜けるとそこには青
々とした北海道の原野が姿をあらわします。
 7月6日(金曜)6時34分、函館着でしたので、6時20分頃、ロビーカーに集
合ということにしてありました。
 切符の手配の都合で、行きは花筏氏が4号車、私が5号車でしたので、お互いに起
こしに行ったりきたりすると周囲のお客さんに迷惑ですから、ロビーカーでの待ち合
わせとしました。


 私が起きたのは6時を少し過ぎた頃だと思います。
 身支度をしてロビーカーに行くと、すでに花筏親方はタバコを吸って待っておりま
す。
 彼には珍しく「よく眠れなかった」とのこと。となりのおばさんの歯ぎしりがうる
さかったそうです。花筏氏は、いびきがうるさいのが有名で、またどこででも寝る人
なのです。
 その彼が寝付けないとは、そうとううるさい歯ぎしりだったのだろうと思いつつも、
旅行となればいびきで他人を寝かせない人が寝付けないはめになるとは因果なものだ
と笑っておりました。


 そんな話をしているうちに函館に到着。私にしてみれば1年ぶりの函館です。
 去年と比べますと、いくらか涼しい気がしました。
 何しろ去年は、北海道にしてみれば異常気象で暑い日が続き、避暑どころではなか
ったので、涼しさは歓迎です。
 駅の周囲を散歩していると、朝市に足が向きます。
 この函館の朝市の食堂は、たいして安いものではありませんが、朝食を取るには他
に手頃なところがないために、ついここで済ませてしまおうという気になってしまい
ます。
 イクラ・ウニ・イカの三色丼を食べて千円なり。値段のわりにはうまいものではあ
りません。
 駅前にコンビニがありますが、そこで弁当やおにぎりを食べるというのも少し残念
なので朝市で食べたようなもので、次回、行くときにはいろいろ考えなくてはと思っ
ております。


 荷物を持ったまま移動するのは面倒なので、宿に行って荷物を預けてしまおうとい
うことになり、常宿に行きました。
 松風町というところで、もともとは市の中心部だったのでしょうが、今はだいぶさ
びれております。
 宿泊手続きをしていると、シングル2部屋は空いていないので、ツインということ
になりました。早い話が相部屋です。
 今朝、眠れなかったという花筏親方のいびきがどんなにひどいかということを気に
しながらも、仕方ないのでツインの部屋を取り、荷物を預かってもらって街に出て行
きました。


 それはそうと、昨年、泊まったときは1泊3500円だったのに、今年は4500
円でありました。
 こういうことは社長に苦情を言うのがよいと思いまして、一言申し上げた件りはま
だ先のことでございますので、一息ついてから申し上げることといたします。
          

その6・函館観光の巻

 暑い日が続いております。そんななか、高校野球では暑さを吹き飛ばすような熱戦
が続いております。
 明日は埼玉県大会の2回戦、初戦に引き続いて応援に行こうと思っております。


 さてまあ、私と花筏親方、暑苦しい二人の珍道中がどうなりますことやら、最後ま
でご辛抱ください。

花は咲いてても 坂はつらいよ!!

 観光という、昔の言葉で言えば物見遊山ということになるのでしょうが、私はどう
もこの、どこかへまいりましても名所古跡だとか景勝地だとかいうところには、なか
なか足が向きませんもので。一人旅ですと、まずどこにも行かない。
 今回は連れがありましたので、いちおうは有名どころへと思いましたが、花筏の親
方も、まあ、この方は太っているから歩くのがおっくうだということで、観光をしよ
うという気にはならない。
 それでも函館というところは、いろいろと観光名所がございますので、いくつかは
見てこないと話のタネになりません。
 それでいろいろ考えてみまして、トラピスチヌ修道院と五稜郭にいってみよう、と
いうことに相談がまとまりました。


 市街地におりますと、函館の街は空が低く感じられます。
 これは、空中線のせいだと思います。
 空中線というのは、今は東京ではなくなってしまいましたが、路面電車の電線であ
りまして、函館は市内電車が健在ですから、たいていのところへ行くには電車で用事
が足りてしまいます。
 この電車と市バスの乗り放題のフリー切符が千円。
 これを買いまして、松風町の電停から終点の湯の川までが30分くらい。この日は
平日なので通学の高校生で混んでおります。期末テストの時期で、みな、ノートや参
考書を開いて勉強しています。


 以前に、武蔵野線でのできごとなのですが、私が立っている前の席に座っていた女
子大生の子が、ドイツ語の勉強をしていたんです。
 ところが、その子はいつまでたっても同じところでつまづいていて、先に進まない。
上からのぞき込んでいた私には、その子の苦戦しているところがよくわかったから、
「ここは現在完了だよ」と声をかけてみたんです。
 車内の雰囲気が一変しましたね。
 今までは、みすぼらしいなりをしているから、どうせ競馬で負けたんだろう、ぐら
いの視線だったのですが、周囲から、「もしかしたらこの人はすごい人なのかもしれ
ない」という雰囲気が伝わってくるのがわかりました。(笑)
 まあ、内容的にはたいしたことではなく、英語で言えば、He has gone というこ
とになるのでしょうが、要は、動詞が過去分詞になっていて、have プラス過去分詞
だから完了と、それだけのことなんですが、女子大生に非常に感謝されました。
その女子大生が今の私の……、何でもない人です(笑)。電話番号も何も知りゃし
ない。
 で、そういう一件があったから、車中で高校生が勉強しているのをのぞいていると、
これが保健体育で、まあ、ほかの科目よりはもしかしたら得意なのかもしれませんが、
車中で教えると変な目で見られそうですので、外を眺めていることにいたしました。


 そうこうしているうちに高校生の集団はおりて、元女子高生という集団が乗り込ん
でまいりますと、ほどなく湯の川温泉です。
 ここからバスに乗り継いでトラピスチヌ修道院へ向かいます。
 修道院は丘の上にあり、ふもとのバス停から1キロちょっと歩かなくてはなりませ
ん。坂道を登るのに花筏の親方は息を切らせています。地面にあと何メートルと書か
れていまして、残り400の標識を通過したあたりでは二人ともだいぶくたぶれてお
ります。
 涼しい日だからよかったのですが、暑い日だともっと疲れることでしょう。
    たんぽぽも今が盛り坂の道  弥助


 これから二人が坂の上で見たことを申し上げますには、だいぶ長くなりましたので、
坂の途中で一息ついてから、また申し上げることといたします。
          

その7・トラピスチヌ修道院の巻

 昨日は早朝から母校の野球があったのですが、少し遅れていったところ、すでに試
合は6回コールド勝ちで終わっていました。
 あともう一試合は熊谷公園球場で、それ以降は県営大宮球場になります。


 さてまあ、道中記の方も熱く書いていく次第ですので、どうぞ最後までご辛抱くだ
さい。

捨て難い 味噌カレー牛乳ラーメン!!

 そういうわけで、7月6日(金曜)、私と花筏の親方という、ふだん運動不足の二
人が息を切らせながら坂道を登る場面から始まります。
 道の脇にはタンポポの花が満開です。やはり、北海道は北の国なのだなーと実感し
ました。関東ではとっくにタンポポの花、終わってますから。
 よく観察してみると、関東地方で見かける、いわゆる西洋タンポポとは少し形が違
います。北海道にしか咲かない種類のたんぽぽだったのかもしれません。
 そのへんは、私も花筏氏も文系でありまして、植物のことには詳しくないのでその
ままになってしまいました。


 ようやく、丘の上まで上がり、トラピスチヌ修道院の見学が始まりました。
 ところがここは、現在も修道女の方たちが寄宿生活を送っているということで、主
要な建物には入らせてもらえないのです。
 高い壁の向こう側にある建物を眺めるだけ。
 わずか5分くらいでほとんどの見学が修了してしまいました。


 そのあと、資料館に入ったのですが、ここもあっさりとした展示が多く、日本の神
社仏閣で得られるような、建物自体のかもし出す威圧感を感じませんでした。
 一般の観光客が訪れる資料館などもあるのですから、もっと荘厳な雰囲気を出して
いてもよいのではないかと思いましたが、これは、ここで修行している方々の考え方
というのもありますから一概にはそういえないのかもしれません。
 ただ、ラテン語で書かれた福音書の一部が拡大コピーされて展示されておりまして、
こういうのはある程度修行しましたから読めますので、「何と書かれているのか」と
言う花筏親方の質問に答えられるような訳はかろうじてできたので、面目を保つこと
ができました。


 資料館を見て、そこに隣接する公園を散策し、タバコを一服してから帰りました。
帰り道は下り坂ですので、どんどん進む。
 そのまま市バスに乗って五稜郭まで行き、不思議な昼食を取りました。
 別の友人から一度は食べてみて、と言われていた、「味噌カレー牛乳ラーメン」と
いうのを食べました。
 五稜郭電停近くの満龍という店です。最初はおつゆにいろいろなものが入っている
のでびっくりしましたが、食べていくと、この味にはまってしまいます。こってり系
のラーメンが好きな人にはお勧めです。
 この友人というのは、函館出身のメルトモで、最近は仕事の関係で長野にいるそう
です。忙しいからなかなか会えないのが残念です。
 ただ、この人の情報は的確で、今回の旅では非常に役に立ちました。


 それにしても、涼しいというか寒い日が続き、半袖のワイシャツしか持っていかな
かった私は寒くなってしまい、急遽、五稜郭電停前のダイエーで長袖のシャツを買っ
てしまいました。
 北海道では真夏でも長袖とか上着のジャンパーとかを売っているのにびっくりしま
した。暑い日が続く関東では考えられないことです。
    長袖を着る贅沢や北の旅  弥助


 さてまあ、ダイエーから出た私たちは五稜郭公園へと向かったのですが、五稜郭で
はどうなりましたか、長くなりましたので一息ついてから申し上げます。
              00000000
  読者の「あきら」より
     それ、ノゲシじゃないですか?
     http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/nogesi.html
     検索もしてみたんですが。
     こないだ札幌へ行ったときには、タンポポと同じような花で、茎が思いっ
    きり細いのがいっぱい咲いていたんですけど、名前がわからなかった。
     たぶん、北海道でも(特に函館では)とっくにタンポポは終わっていると
    思います。たしか、桜の咲く頃、他の花と一緒に一斉に咲くと思いました。
     あと、北海道では秋にもタンポポが咲きます。
     ちなみに、北海道で一度も関東タンポポを見たことがありません。
     相模原では残っている場所があるんだけど。
          

その8・五稜郭の巻

 なんともまあ、連日の酷暑で疲れきっております。本業の方も進まないし。
 マンガ喫茶に行って、本業をせずにマンガを読んでたりします。(笑)


 さて、前回の「たんぽぽらしきもの」についてですが、あきらさんからのご指摘の
とおりです。写真を見まして、もう少し葉っぱが細かった気もしますが、ノゲシだと
思います。貴重な意見をいただきありがとうございます。
 それでは今回もどんどん進めてまいります。

「可愛い」と「可愛いかなぁ」の違い!!

 さて、五稜郭電停前のダイエーで身支度を整えた一行、私と花筏の親方の2名は、
方角でいうと北のほうになりますが、五稜郭公園へと向かいました。
 私は長袖を買い、親方は帽子を買いました。ダイエーは元気がなかったです。品数
も少なかったし。3月に清水へ行ったとき、駅前の丸井が閉店セールをやっていまし
たが、そのときと同じような雰囲気だったので、けっこうやばいかもしれません。


 そんなことを話しながら坂を下っていくと、北海道新聞社がありまして、その先が
五稜郭公園です。
 ちょっとした散歩なのですが、花筏の親方は、午前中、修道院へいくために散歩し
たことで少々疲れていた模様で、公園に着くなり、ぐったりしていました。
 五稜郭の中を歩くのがなかなかよいのではないかと思っていましたが、疲れ具合か
らして、そういう気にはなりそうもないので、タワーに登ることにしました。
 タワーに登る前の展示コーナーに、親方が「どかたのとしちゃん」と呼んでいる土
方歳三の写真や、榎本武揚を紹介するパネルなどがあり、歴史の勉強になります。
 ただし、我々の場合、すぐ忘れる。(笑)メモを取ったりしている熱心な人たちも
いましたが、私と花筏の親方はそういう勤勉さがないので、いくら見ていてもだめで
すね。(笑)


 さて、タワーに登ってみますと、五稜郭だけでなく、大沼のほうや、海のほうなど、
いろいろ見ることができます。
 まあ、それはそうとして、タワーのエレベーターガールがなかな可愛かったという
ことで、親方がだいぶ元気になりました。私にはあまり可愛いとは思えなかったので
すが。ふだん、オフ会やなにかで、きれいな人を見慣れているからかな。(笑)
 あまりこういうことを書きすぎると、苦情のメールがどっと来そうなので、これく
らいで。(笑)


 地上に戻ってきますと、すぐにお土産売り場が待っております。
 私は、知人から頼まれた、北海道限定販売のロイズチョコレートというのを買いま
した。生チョコレートなのでクール宅急便で送ってもらいました。あとでその人の家
に行ったときに少し食べさせてもらいましたが、なかなかおいしいチョコレートで、
こんど函館に行ったら自分用も買おうと思いました。
 親方もなにやら買い物を済ませ、外のベンチで休憩をしています。親方は、ソフト
クリームを食べてご機嫌のようです。
 私は牛乳を飲みました。北海道の牛乳は、こくがあっておいしいです。
  牛乳の旨さ感じる北海道  弥助


 こうして、なにごともなくこの日の観光を終え、電車で松風町まで戻りまして、ホ
テルにチェックインしました。
 朝が早かったということで、夕方まで1、2時間の昼寝をして、それからまた出か
けるということになりました。
 さて、昼寝から覚めてどうなりましたことやら、長くなりましたのでこのあたりで、
一息ついてからまた申し上げます。
          

その9・パーシモンへようこその巻

 だらだらと書き連ねていて、時間の感覚がなくなっていくのが怖いのですが、今書
いているのは7月6日(金曜)のできごとでありまして、一日がとても充実していた
ものだと、今さらながら感慨にふけっております。
 北海道から帰ってきてはや10日がたとうとするのを思わず忘れてしまいます。
 10日の相撲を12日見るという小噺がありますが、そんな感じで書いております。


 では今回もどうぞ最後までご辛抱ください。

頑固は勘定にも 表れているではないか!!

 市内観光をして疲れてしまった親方と私の二人連れは、宿で休憩し、昼寝をしてか
ら夕方の5時ごろ起きだして、松風町の喫茶店、パーシモンへと向かいました。
 去年、函館に来たときにいろいろとお世話になったので、今年も来ましたという挨
拶をして、コーヒーでも飲もうかと思ったのですが。
 この店は、去年の4月にオープンしたそうです。定年でリタイアしたおじさんが、
気まぐれでやっている店です。このおじさん、いちおう、マスターと呼んでおくこと
にしますが、これがなかなか頑固者で。
 私の知り合いの50代、60代の人々は、なぜかみな頑固者、昔かたぎのいっこく
者、職人肌、いろいろ言い方はありましょうが、一筋縄ではいかない人たちばかりで
ありまして。
 うちの親父、指導教官、落語家の……、まあ、いろいろな方がおられますが。(笑)


 一年ぶりに行ったのに、マスターは私のことを覚えていてくれまして、歓迎しても
らえました。マスターの記憶力がよいのか、私が個性的だからなのか、そのあたりは
よくわかりません。
 このパーシモンというお店、マスターの考えでは、朝は定食屋、昼は喫茶店、夜は
ショットバー、という主義でやっているみたいで、私と花筏の親方が行った時間帯は
昼から夜へと切り替わるころでありました。
 われわれの最初の考えでは、ここで軽くコーヒーでも飲んで、寿司のうまい店を聞
いて、そっちである程度食べて、また戻ってきてカクテルでも飲もうかな、という感
じだったんです。
 それで、「寿司が食べたいのだけど」というようなことを言ったら、マスターは、
「出前を取って、ここでビールを飲むのが一番安くつく」ということを言いはじめて、
喫茶店の中にいるのによその店から寿司の出前を取ることになりました。
 マスターは、トン汁を作ってくれて、寿司の来るのを待っていました。
 そして、サラダを作ってくれて、ビールも出してくれました。
 出前の寿司は特上の大盛りで2500円。ネタも量も私たちにとって充分すぎるく
らいでありました。


 ここのマスターが頑固なところは、ともかく店の雰囲気を自分の好みのようにする
ということで、夜の時間帯は店内にジャズが流れています。
 花筏の親方が、若いくせにジャズに詳しくて、マスターといろいろ話をしていて、
だいぶ気に入られたようでした。
 寿司を食べた後もちびちびとビールを飲みながら、いろいろ話をしていますと、4
0代くらいの二人連れがやってきて、パフェを注文したんです。
 するとマスターは、「子供の食い物を夜に出すと雰囲気が壊れる」とか言って、作
らないんですよ。(笑)せっかく来た客を、「雰囲気に合わない」と言っては帰して
しまい、表通りを自分好みの人が歩いていると、強引に呼び込んでしまうという、ま
あ、落語の主人公にでもなりそうなマスターです。


 私も花筏の親方もあまり酒は強くないのですが、それでも、ビールを二人がかりで
3本ほど空けまして、コーヒーをすすって、そろそろ帰ろうかということでお勘定を
 聞いたら、二人で千円!!!
 お勘定もその日の気分でやっているに違いありません。
 千円札を2枚渡そうとしたら、全然、取り合ってくれない。
 しかたなく、ここは甘えさせていただいて、明日もまた来ますということで宿に戻
りました。
    七夕は価格破壊かパーシモン  弥助


 それから宿に戻りまして、花筏の親方のいびきを、どこをどう誤魔化したのか、私
はいい塩梅に熟睡いたしまして、翌朝のできごとをお話いたしますにはだいぶ長くな
りましたので、ちょっと一息、またつとめます。
          

その10・競馬場は泣き笑いの巻

 旅から帰ってきて10日もたちますというと、だんだん記憶が薄れてくるのですが、
まあ、ぼちぼちと書いてみます。
 べつに締め切りがあるわけでなし、何日間連載という約束があるわけでなし、気ま
ぐれで書いているものですから。
 それにつき合わされている皆様には大変にご迷惑でしょうが、ご辛抱のほどを願っ
ておきまして。

手綱さばきより 携帯さばき!!

 7月7日、土曜日の朝。目覚めたのは7時過ぎだったと思います。
 身支度を整えてから、朝食をとりにパーシモンへ。
 前にも書きましたとおり、朝は定食屋でございまして、ただ、焼肉定食とかトンカ
ツ定食なんというメニューはございませんで、もっぱら、「シェフの気まぐれ定食」
だけという、そういういいかげんな店ではありますが、黙っていてもいろいろ出てく
るところがありがたいです。


 その日は「イカづくし」ということで、イカ刺し、下足の煮付け、塩辛、などなど。
そのほかにサラダと炒り玉子、ソーセージ、タラコがついて、ご飯と汁物はもちろん
あって、コーヒー飲み放題で1000円。
 材料費を回収できているのかどうか、はなはだ疑問であります。(笑)
 なにしろ、朝食がその日で一番豪華な食事という、栄光の日々でありました。


 さてまあ、その日は土曜日でありまして、昨日いろいろと観光したから今日は競馬
に行こうかという、こういう意見はすぐにまとまるものでありまして、松風町の電停
から昨日と同じく湯の川温泉行きの電車に乗りますと、20分ほどで競馬場前に到着。
天気は晴れ、絶好の良馬場でありますが、この競馬場は海に面しているせいか、天気
がよいと浜風が吹きつけて、7月でもそうとう涼しいのです。涼しいというより、酷
暑の関東地方から来たわれわれにしてみると寒いくらい。
 昨日、買った長袖を持ってきておいてよかった、と思いつつ、レースの始まる前に
とりあえずトイレにいっておこうと思って、用足しに出たのですが。
 トイレの個室に入って、屈もうとした瞬間に、胸のポケットに差していた携帯電話
が、スポッとはずれまして、トイレの中に落っこちてしまった。
 これはもうどうしようもありません。
    海ゆかば水つく屍  大伴家持
 なんという古い歌が一瞬よぎるのですが、歌をうたったってだめなものはだめ。
 で、携帯電話と涙のお別れをいたしまして、実家や友人たちとはその後しばらく音
信不通となってしまったのでした。
 まあ、うるさい電話がかかってこない分、旅を楽しめるからいいだろうと納得して、
帰りに秋葉原で何とかしようと思っておりますと、いよいよレースが始まります。
    浜風が追い風になる夏競馬   弥助


 競馬の結果をだらだらと話しても、だれるところですので省略して、最後のレース
も終わって、そのあとで騎手のサイン会というのがあったので行ってみました。
 ちょっとミーハー的かも知れません。函館では毎週やってるのかと思いましたが、
私たちが出かけた日にたまたまやっていただけだそうで、これはラッキーでありまし
た。
 サインをしてくれる人は3人いまして、それぞれ、勝浦騎手、本田騎手、小林(徹)
騎手というお名前です。それぞれ先着30名の人に、その場で色紙にサインをしてく
れます。
 このうち、勝浦騎手は若手ながらこれからが期待されるホープで、私たちが行った
ときはもう人数がオーバーしていました。
 本田騎手は今年の桜花賞というレースを勝ち、味のあるベテランとして人気があり
ます。あと5人くらい余裕があった。
 もう一人、小林騎手は、今日のレースでいいところなく敗れ、お客がほとんど集ま
っていません。
 そういうわけで、本田騎手か小林騎手か、どちらかにサインしてもらえるわけで、
花筏の親方は本田騎手のほうに並びましたが、私はどうもひねくれているというのか、
判官贔屓なのか、小林騎手の列に並びました。
 小林騎手は、サインはうまかったです。(笑)サインだけでなく、騎乗の練習もし
っかりしてほしいのですが。


 その後、驚くべきことがありました。花筏親方が、テレビのインタビューを受けて
いるのです。「どこから来ましたか」とか「本田騎手の印象はどうでしたか」とか、
月並みな質問ですが、女性のインタビュアーとしばらく話していました。
「函館競馬でこんなことがありました」という地元のニュースで使われるのかもしれ
ません。
 サイン会が始まる前に、そのお姉さんが各騎手の紹介をしていました。
 そのとき何かを読みながら経歴を紹介していたのですが、どうも気になったことが
ありました。
 それは、「手綱さばき」というのを「てづなさばき」と読んでいたことでありまし
て、「たづなさばき」というのが正しいと思うのです。
 競馬の特別な専門用語ではないような気がするのですが。


 あまりそういうことにこだわっていてもどうしようもないので、まあ、サインをも
らえてよかったと単純に喜んで、湯の川温泉に行くことにしました。
 本日の結果は、携帯を失ってサインをゲットしたので一勝一敗だった、と花筏親方
と話しながら電車に乗り込んで、それからどうなりましたか、申し上げるにはだいぶ
長くなりましたので、一息ついてから先をつとめることといたします。
              00000000
  読者の「あきら」より
     ひとことだけレス。
     トイレに落ちたってだけで、携帯を捨ててきたんですか!?
  読者の「圓窓」より
     携電に限らず、胸のポケットに物は入れないようにすべきです。
     入れていいのは、恋の思い出だけだそうです。
     思い出なら、しゃがんでも落ちません。
          

その11・なんで阪神ファンなのかの巻

 昨日、今日と、関東地方は強い夕立がありまして、いくらか涼しくなってまいりま
した。今日で一学期もめでたく終了で、明日からは夏休みであります。
 明日は野球の試合がまたもや第一試合ということで、早起きをしなければならない
 関係上、道中記のほうも早あがりさせていただきまして。(笑)


 そうそう、あきらさん。
 実は、携帯は拾ってよーく洗ったんですけど、それがまずかったという説もありま
す。(笑)
 圓窓師匠。
 ポケットに入れていいのは、夢とチュウインガムかと思った。(笑)
 恋の思い出は……、(しばし沈黙)。
  今はただ独り書を読み過ごすとて
    忘るるなかれあのときの夢  弥助

函館に なぜ阪神ファンが 多いのか?!

 花筏の親方は、実家が商売をやっておりまして、本人もなかなかこすっからいとい
うか、抜け目のない人でありまして。
 さっき競馬場でもらったサインなんですけど、自分の店の名前「焼肉〇〇さん江」
と書いてもらってある。これをお店に飾っておくと、まるで本田騎手が焼肉〇〇に来
店したかのような感じがしますよね。
 こういうのを商売上手というのか、ペテンというのか知りませんが、ともかくも、
私も親方もご機嫌で、湯の川温泉でひと風呂浴びて、それから市街地に戻ってまいり
ました。


 花筏の親方が「揚げ物が食べたい」と言うので、夕食は天下茶屋という飲み屋に入
りました。チェーン店なので値段は安かったように思います。
 この店は、天ぷらが有名で、ランチタイムは天丼をやっております。で、天ぷらの
盛り合わせ、串ものその他を注文して、とりあえずビールで乾杯!!
 二人ということでカウンターに案内されて飲んでいました。
 板さんの仕事を見ているのも好きなので、ボーっとしながら見ていると、親方が、
「阪神グッズがいっぱいある」と言います。
 そういえば、この話に何回か出てきているパーシモンのマスターも阪神ファンだと
言っていました。
 なぜ函館で阪神ファンなのか、というのは大いなる疑問です。
 テレビ中継は巨人戦中心だから、巨人ファンが多いのは当然として、函館という地
域性を考えますと、はるか大昔に大洋ホエールズが、下関とともに函館を準本拠地と
していた関係から、今の横浜を応援する人が多いのはなんとなく理解できるんです。
 花筏の親方と話をしていて、冬場、北海道や東北の人たちは出稼ぎにいくことが多
いから、そういう関係で関西に行った人たちが店をはじめているのではないか、とい
う意見にまとまりました。
 ただ、冬場は野球をやっていないし、関西に行っていた人が料理を覚えてきて開業
するとなると、やっぱり関西系の味付けになるはずで、そういうこともなかったから、
二人とも不思議に思っていました。


 お勘定をすませてから、なんとなくパーシモンに足が向きました。というか、電車
の停留場から宿に行く道中にあるので、ほとんど必ず寄ってしまうのですが。(笑)
ビールをさんざん飲んだあとだったので、コーヒーを飲むことにして店に入りました。
 で、マスターに何で阪神ファンなのか、聞いてみました。
 理由はとても単純でした。
「天下茶屋もうちも、ひねくれものだから」(笑)
 なんだか、ペテンにあったような心持ちでがっかりしていましたが、今夜も大歓迎
をうけ、コーヒーだけしか注文していないのに、サービスでケーキがついてきました。
 昨日のこの時間にパフェを頼んだ人は怒られて作ってもらえなくて、同じ時間に今
日は頼まないケーキが出てくるという、世の中の不可思議さ、言い変えるとマスター
の気まぐれということなのですが、まあ、ラッキーではありました。
    山へ行く前に征服モンブラン  弥助


 函館山から夜景を見に行こうかという考えもあったのですが、男同士で行くのもな
ー、ということで無精な二人の意見はすぐまとまり、烏カァーで夜が明けてからのこ
とを申し上げますには、だいぶ長くなりましたので、一息ついてから改めて申し上げ
ます。
            00000000
  読者の「もて」より
   「道中記」は本当に楽しく感心しながら読んでいます。
    大きな体で、のんびり(!)しているように見えて、見る目の確かさに舌を
    巻いています。
    弥助さんは、私の子ども(28歳と27歳)と同世代ですよね。
    うちの息子なんか、仮に1ヶ月旅行してたって一行も書いてこないですよ。
    ちなみにイチロー選手と高校は同じクラス(高3)でした。
    話が脱線しました。
    函館のユニークな喫茶店のマスターの話、競馬の話など引き込まれました。
    語り口に独特のリズムがあります。って大学院生に言うことじゃあないです
    けど。
    また、脱線しますが、私の住んでる市には「中京競馬場」があります。
    30年、住んでいるに一度も足を踏み入れたことがありません。
    毎日、競馬場の正門を通り過ぎて通勤しているだけです。
    でも、弥助さんが中京へこられることがありましたらご案内します。
   「道中記」ファンがいることをお知らせまで。
          

その12・函館商 勝ったよの巻

 高校を卒業してからだいぶたちますが、例年になく熱心に、母校の野球を応援して
おります。
 本日は3回戦で、過去二回、甲子園出場の高校と対戦して、3−2で辛くも逃げ切
り勝ち、来週からはローカル放送ですがテレビ埼玉でわが校の試合が中継されるまで
に勝ち進みました。
 OBはそれを祝して当然ながら熊谷で飲み会をしていたわけでありまして、そんな
に遅くに帰ってきたわけではないものの、本業をしようという気があまりないので、
今日は野球の話を書いてみます。


 そうそう、もてさんへ。
「場違いなことを書きゃがって」とか「早くやめさせろ」と言った苦情が出ることも
 覚悟しながら連載を始めましたが、皆様の忍耐強さによって支えられております。
ありがとうございます。
 中京競馬も様子を見に行きました。
 名鉄の駅がとてもきれいなのにびっくりしました
 携帯はウンよく、おとしませんでした。(笑)

函館で野球に「感動した!!」

 話は前後しますが、競馬場にいたとき、私はラジオを聞いていました。
 関東だと、短波ラジオはもちろんですが、AM局でも、ニッポン放送とかラジオ日
本とかで競馬中継をやっているので、解説者の意見を聞こうというのがそもそもの目
的でした。
 でも、健全な函館の放送局は、競馬中継を放送していませんでした。ダイヤルを回
していて耳についたのが野球中継。
 その日、7月7日、土曜日は、高校野球函館地区予選の決勝の日でありまして、函
館商業対函館有斗の試合が行われました。


 私の友人が函館商業の出身だということをすぐに思い出し、こりゃぁ応援せねば、
と思い、競馬のほうは、それからの数レースは花筏の親方に任せて、私はラジオを聞
いていました。
 5回を終わった時点で4−2と商業がリードしています。
商業のピッチャーは後半になって、だいぶバテてきたようですが、それでも8回まで
辛抱して投げていました。
 9回の表に、商業は待望の追加点をあげまして5−2、ところがそのあとランナー
が2塁と3塁の間ではさまれてしまい、タッチアウト。
 追加点は一点だけで、9回の裏の有斗の攻撃を迎えることとなりました。
 結果的には、9回表の1点が両校に大きな意味を持つこととなりました。
 商業の山下投手は、へとへとになりながらも、かろうじて有斗の攻撃を2点で抑え、
5−4で辛くも逃げ切り、函館商業が30数年ぶりに函館地区代表として南北海道大
会に進出することになったのです。

 帰ってきてから友人とチャットで話したところ、数十年前に甲子園に出ていた頃は
ともかく、いまの函館商業は、まあ、商業高校は全般的に言えることですが、女子の
人数が男子を上回り、野球部が存続のピンチに立っていると言っていました。
 また、昨今の不況により、家庭の都合からアルバイトをせざるをえない生徒が増え
て、物心両面から野球どころではないという状況にあるようです。
 そんな中、地区大会とはいえ、甲子園の常連校を破っての優勝は、非常に価値があ
ることと思います。
 小泉首相ではないけれど「感動した」。(笑)
 明21日からの南北海道大会でも健闘を祈っています。
   夏空やここが私の甲子園  弥助
          

その13・競馬場ぞめきの巻

 ついに4回戦でうちの高校は敗れました。
 第1シードの高校とあたり、0−7という結果でした。
 それでも、熊谷公園球場から脱出して県営球場で試合ができるまでになったのは、
大健闘でした。


 さて、しばらくお休みしていた「函館道中記」、気の向くまま書いてみようと思い
ます。ご辛抱のほどを願いまして。

馬券窓口のひやかしにも「感動した!!」

 さてまあ、4泊5日という旅も、2日目、3日目と、いろいろな思い出をつくりな
がらあっという間に過ぎまして、4日目、7月8日の朝を迎えました。
この日は、さすがに私も花筏の親方も疲れていまして、9時過ぎまで寝ていました。
 私たちが泊まっているのは松風町のグリーンホテルという安宿。
 10時にはチェックアウトですから、ばたばたと着替えて、朝食を取りにパーシモ
ンへ。
 本日のメニューは「鮭づくし」。焼き鮭、いくら、マリネ、汁物など、豪華なメニ
ューであります。これも千円。(笑)
 さて、昨日は、携帯電話をこわしたり、たまたま野球の試合があったりして、競馬
に集中できなかったので、充分な戦果があげられなかったということで、意見が親方
と一致し、またまた競馬場に突撃しました。


 馬券というものは、大昔は、番号順に売り場があったそうで、たとえば3−6を買
おうとしたら、3−6の窓口に行ってそれを買うというやり方だったそうです。
 今では、マークシート方式でありまして、自分の買いたい組み合わせと金額をマー
クシートに記入、つまり専用の紙に書いて、売り場に出してお金を払うというシステ
ムになっております。
 だから、どこの窓口で買っても同じことなのです、建前上は。ところが、実際には、
窓口によって差がありまして、どういうところに差があるのかというと、誰から買う
のか、ということであります。
 つまり、少しでも可愛いお姉さんから買おうという、当たり外れとは一見無意味な
ところで、静かなかけひきが行われております。
 落語のチケットも、売り子が変わるとよく売れるようになるのと同様に、(笑)競
馬場でも微妙な心理戦が展開されているのです。(笑)


 それで、どこの窓口嬢が可愛いのかというのを研究をするために、窓口を端から端
までよく観察いたします。(笑)
 こういうのを専門用語で「ひやかし(素見)」といいます。または、「ぞめく」とも
言う。なにしろ、40人からの女の人がずらっと並んでいるのでありまして、昔で言
えば大店もいいところで。(笑)
 べつに、窓口の人を身請けしようなんという了見は誰も持っていませんで、ただ一
時の気の迷いでしかないわけですが、JAR(中央競馬会)は、実に男性心理をうま
くついてくる。
 可愛い女の子から買うのに、100円では恥ずかしいから500円、1000円と
買わせようという、売上アップの手口なのであります。
 こういうのは、マクドナルドなぞに行ったときも、どのお姉さんに注文しようかと
いうことで、ばくち打ちだけでなく、世の男性はみな考えていることなのであります。
(笑)


 2階と3階の売り場をぞめいてから、マイ窓口を決めて、そこで買うことにいたし
まして、まあ、何度か通いましたが、もとより馬券の当たり外れには影響がありませ
んもので、その日、私は3000円くらい負け。2日間行ったことで競馬の醍醐味を
感じて満足し、湯に向かうことにしました。
   券を売る女の顔をぞめいても  弥助


 啄木館という、その辺りではちょっと高級なホテルへ湯に入りにいったお話は、長
くなりましたので、また改めて申し上げます。
          

その14・東京湯の巻

 この夏一番の暑さで、前橋では40℃、埼玉県北部地方も39℃を突破し、頭がボ
ケています。
 クーラーの効いているところから出るのが、非常におっくうで。
 鈴本演芸場に行って涼むというのも一つの手でありまして、今週中にうかがおうと
思っています。


 さて、競馬ネタが続いていましたが、今回からまた新たな展開を見せます「函館道
中記」、どうぞご辛抱ください。

豪遊 豪湯 1000円!!

 競馬場をあとにした私と花筏の親方は、とりあえず、湯に行くことにしました。
 電車で、湯の川行きに乗り、終点のひとつ前の湯の川温泉という停留所で降ります。
 この函館の市内電車は、本数も多いし便利なのだけど、停留所で電車を待っている
ときに、ホームからちょっと手足を出すと、猛スピードでやってきた電車にかすりそ
うになってちょっとこわいです。路面電車になれていない私たちはちょっとひやひや
していました。
 特に花筏の親方は体が私以上に大きいので、はね飛ばされないように停留所の柱に
しがみつくような感じで電車を待っているのが印象的でした。彼にもこわいものがあ
るかと思い、私は笑っていました。
 そのあと、私のこわいものが出てくるのですが、それはまたあとで。(笑)


 さてまあ、湯の川温泉につきまして、前日、入った湯は400円のところで、そこ
そこよかったのですが、今日は函館の最終日ということで、もう少し豪華な湯に入り
たい、と思いまして啄木館というところに行きました。
 1000円です。(笑)
 ここは名前のとおり、石川啄木が泊まっていたといういわれがあります。
 ただし、宿そのものは非常に高級な建物になっていまして、現代に啄木が生きてい
たら、とてもじゃないけど泊まれるような宿ではありません。(笑)
  石川や浜の真砂は尽きるとも
     われなきぬれて かにとたわむる  詠み人しらず?
 寄席で覚えた歌を思い出しながらエレベーターに乗りますと、屋上11階が湯にな
っております。
 昨日の風呂とは全然違う。非常に豪華です。さすが1000円も払っただけのこと
はあります。(笑)
 湯舟が3つありまして、2つは室内、1つは露天風呂になっています。
 体を洗って、室内の風呂でよく温まってから露天風呂へ。
 露天風呂はお湯が汚かったので早々に退散しましたが、函館山や海がよく見える位
置にあり、気分がリラックスします。


 さて、室内に戻ってみると、2つある湯船のうち、さっき私が入ったほうは混んで
るのに、もう一つのほうはすいています。
 水風呂かと思ってそっちに行ってみましたら、お湯が熱い。ピリッとします。
 私は江戸っ子ではないですけど、関東の人間はたいてい熱いお湯が好きで、わたし
も多少熱めのほうが好きです。
 で、熱い方の湯がすいているものだから、そっちに入っております。
 と、関西の団体さんがどっと来まして、みんなちょっと手に湯をかけて、「あっつ
いわー。よう入れへんでー」といって出て行ってしまう。
 おもしろいもので、関西の人はやっぱりぬるい湯が好きなのですね。
 圓生師匠の[浮世風呂]のマクラで、下関では熱い風呂に「東京湯」と札を出して
おく、という噺があったのを思い出して、親方と話をして笑っていました。
   湯上りに飲む牛乳も北海道  弥助


 湯から出て、マッサージ器があったので親方と一緒にしばらくかかっていました。
 すると、マッサージ器のセールスの人がきて、しきりに買うようにすすめているん
です。
 まあ、高級ホテルに泊まる人たちだから、一台ウン十万円のマッサージ器を買う人
もたまにいるのでしょう。
 ただ、私と親方は、どうもマッサージ器を買うほど財力がないということをセール
スマンにたちまち見抜かれまして、(笑)5分間でマッサージ器から追い出されまし
た。(笑)


 それから縁台でタバコを吸っていたのですが、まあ飯でも食おうじゃないかという
ことで、函館の友人に教わった店へとくり出して行ったくだりは、だいぶ長くなりま
したので、一息ついてから申し上げます。
          

その15・ラッキーピエロの巻

 どこへ行っても「暑いですね」という挨拶が出てまいります。
 群馬や埼玉のダムのある地方、東京の水がめといわれている辺りにまとまった降水
がないので、8月になると深刻な水不足が予想されます。
 今のうちから何か考えておいたほうがよいかもしれません。


 そういうわけで、だらだらと続いている「函館道中記」でありますが、まあ、だい
ぶ先が見えてきました。
 あと何回かで終わるはずですので、ご辛抱のほどを。

大量なるかな 激辛なるかな!!

 湯から上がって一息ついた、私と花筏の親方の二人は、夕食の時分でもありました
ので、何か食べようと相談しておりました。
 函館出身の友人が紹介してくれたお店、5軒くらいあったのですけど、まだそのう
ちの1軒しかいっておらず、今日が函館に滞在する最後の日ということで、「紹介し
てもらったお店のうちのどこかに行ってみよう」ということになりました。


 で、行ったのが、五稜郭電停近くの「ラッキーピエロ」というお店です。
 ここは、カレーとハンバーガーを中心とした、ファストフードのチェーン店であり
ます。
 花筏の親方はチキンカツカレーを注文しました。
 私は、チキンカツにしようか、トンカツにしようかと迷って、結局、トンカツカレ
ーとチキンカツバーガーの二品を注文いたしました。
 たいてい、ファストフードのカレーというのは、量が少ないので、二品注文しても
なんとかなるかなーと、思っていたんです。
 ところが、出てきたカレーを見てびっくり、すごく量があるのです。(笑)チキン
カツバーガーも、予想していたよりも大きい。
 これはしくじったなー、と思いながらも、せっかく注文したのだからと、全部食べ
てしまいました。
 味のほうはというと、なかなかよかったように思います。
 とくに、カレーはおいしかった。
ただ、ハンバーガーのほうはというと、無理やり食べていたせいもありますが、い
まいちかなー、という印象でした。


 この店に限らず、別の種類のものを2品扱っている店ってけっこうあるのですが、
どちらかがよいと、もう一つのほうはあまり評判がよくない場合がありますね。
 うちの近所で、トンカツと鰻を扱っている店があるのですが、トンカツは旨いのだ
けれど、鰻はあまり評判がよくない。
 他にも、寿司と天ぷらをやっている店もあるのですが、寿司は旨いけど天ぷらは旨
くないとか、いろいろあります。


 とはいえ、いろいろ理屈をこねながらも、非常に満腹になりまして、店の中で少し
休んでおりました。
 花筏の親方のほうは、こちらは激辛のカレーを頼んだせいで、水をお代わりして飲
んで、それでも辛いからと、アイスコーヒーにガムシロップをいっぱい入れて飲んで
いる。
 二人して動きの取れない状況にあります。店内は高校生が多く、私たち二人は少々
場違いな感じがしていたのですが、仕方ありません。
 で、高校生をそれとはなしに観察していると、どうも巡回指導に来た教員と間違え
られたようで、みなお行儀よく食べています。(笑)
   食欲は部活帰りの高校生  弥助


 彼らはたぶん、ここで何かを食べて、家に帰ったらまた夕食を食べるのでしょうね。
「そんな時代もあったね」と親方と話をしているうちに、胃のほうもどうやらおさま
りがついてきたので、店を出ました。


 そのあと、夕暮れの函館どっくに向かいましたくだりは、だいぶ長くなりましたの
で、一息ついてからまた申し上げることにいたします。
        

その16・断崖絶壁への挑戦の巻

 今日は一転して涼しい日でありました。涼しくていくらか寝冷えをしたのかもしれ
ません。
 ちょっと体調が変なので、道中記は早上がりをして、今夜はゆっくり寝ようと思い
ます。
 そういうわけで、本日もご辛抱を願っておきまして。

こんなところで 火曜サスペンス!!

 前にも書きましたが、市電の一日切符は1000円です。
 市電は、乗車区間によって、200円から250円まで料金に幅があるのですが、
ともかく、5回乗ったら元が取れます。
 朝、松風町から乗って、競馬場前、湯の川温泉、五稜郭前、と乗り降りしまして、
あと2回乗ればいいということで、夕暮れの時分になってはいましたが、ともかく出
かけようということになりました。


 五稜郭前から乗って、終点の一つである函館ドック前まで行きました。
 私も花筏の親方も、さっき食べたカレーの影響がまだ残っていて、私のほうは食べ
すぎで苦しいし、親方は辛いものを食べた後でひいひい言ってます。
 もう6時半を過ぎていて、あたりはだんだん暗くなってきています。
 電車の中は、というと、お客さんがほとんど乗っておりません。松風町、函館駅前
と通過するごとに減っていって、函館どっく前まで乗っていたのは私と親方の二人だ
けでした。
 7時過ぎにどっく前到着。
 辺りを見まわしても、暗くてよくわかりません。
 とりあえず、出かける前にということで、電停前の公園のトイレで用を足しました。
 するとですね、変質者がいたんですよ。(笑)もちろん、私と親方以外の第三者で
す。(笑)
 私どもがトイレから出てきたとき、女子トイレから男の人が出てきたんです。
 いやー、こういうときにですね、どう対応したらよいか、とっさに判断がつかなく
て、とりあえず走って逃げたんです。
 なにも、こっちが悪いことをしているわけではないから、逃げなくてもよいのです
が、習性というのか本能というのか、逃げてしまった。(笑)
 みなさまにご注意申し上げます。
 函館ドック前の公園のトイレに、暗くなってから入ってはいけません。(笑)


 で、ばたばたと駆け出して、街灯のあるところまで来てみると、「外人墓地800
m」という看板が出ている。
 私は肝試しをかねて、そこに行くのもいいのではないかと思ったんですが、坂を登
らなくてはならないということで、花筏の親方はトラピスチヌ修道院でこりています
から、あまり行きたい様子でもなかった。
 同じ歩くなら坂のないほうがいいということで、漁港のほうへ行くことにしました。
 イカ釣りの舟がもう出ていまして、きらきら光っているところなぞは実にきれいな
もので。函館山もよく見えます。
 親方は、もっと近くで見えるところがある、ということで、防波堤に登り始めたん
です。
 防波堤、高さは陸地から3メーターくらいでしょうか。そこに、崩れかかったよう
な梯子が架けてあって、そこから登っていくのですが、私は、何を隠そう高所恐怖症
で、登ることができません。
 しかも、花筏の親方の登ったあとに梯子を登るとなると、かなり不安です。崩れや
しないかということで。(笑)
 それでも、何段か登って、防波堤の上に顔を出してみたのですが、向こう側は断崖
絶壁、防波堤の幅は1メートルくらいしかなくて、とても私が上れるところではあり
ません。ましてや暗いし。
 それでも親方は、私が心配しているのに、防波堤の上をすいすい歩いていく。なか
なかどうして度胸があります。(笑)
 私はあきらめて下で待っていました。外人墓地で肝試しするはずが、こういうとこ
ろでするようになるとは思わなかった。(笑)
   はずかしや高いところに登れない  弥助


 そのうちに花筏の親方が降りてきまして、漁港の周辺を散歩しながら帰ったお話は、
だいぶ長くなりましたので、一息ついてからまた申し上げることにいたします。
             00000000
  読者の「あきら」より
     昨日、堀木君と話してたんですけど、「函館道中記」は面白いです。
     毎回読ませて頂いています。
     辛抱なんてしてないですよ。(笑)
     ただ、つっこみどころがなくてレスを返さないでいるだけなんで(突込み
    どころを作って欲しいというお願いではありません)、大人しくしてますが、
    読んでますんで、これからもよろしく。
     完結したら、「函館道中記」を別の場所に保存しておこうと思っています。
          

その17・函館の女はウソ説の巻

 そういうわけで、鈴本演芸場に無理やり行ってしまったために、普段より疲れてい
ますが、くぼたさんからも声援のメッセージをいただき、ありがたいことでありまし
て、いつもよりよけいに書いてみます。(笑)
 では、最後までご辛抱ください。


 そうそう、あきらさん。
 筆の向くままというか、指の向くまま、書いている(打ち込んでいる)だけですの
で。
 ある意味で、メモ代わりです。山場もないし、落ちもないので、退屈な話かもしれ
ません。
 授業の合間にする雑談だったら、またいろいろ考えるところですが。
 保存するほどのものではありませんが、お心遣いありがとうございます。

路面電車の中で 落語は聞けない!!

 すっかり暗くなってしまった函館ドックで、私と花筏の親方の二人は散歩をしてお
ります。
 まあ、空が暗くなるのは仕方ないとして、漁港の周辺は、まったく人影がない。
 ちょっと離れたところで焚き火をして騒いでいるアンチャンたちはいましたけど、
それを除いて、ゴーストタウンのように静まりかえっています。まだ7時半なのに、
です。
 漁船がつないであるのを見ていましたが、それももうほとんど見えなくなってきま
した。函館山の中腹の明かりが見えています。だんだん寂しくなってきたし、さっき
は変質者もいたので、早々に退散することにしました。
 それでも、来たときと同じ道を通るのも野暮なので、路地を一本ちがえてみたんで
す。


 朝の早い町は夜も早いわけで、ときどき二階で勉強しているらしい灯りはいくつか
見ましたが、路地の両側ともほとんど電気が消えています。
 追いはぎにあったとしても、翌朝まで誰も気がつかないのではないかというほどの
寂しさです。
 なんとか電車の停留所にたどり着いて、早く電車が来ないかと待っていたんですが、
そういうときはなかなか来ないもので。
 仕方がないから持参していたラジオを聴いていると、「真打競演」が始まっちゃっ
た。おなじみ、日曜の夜八時からのNHKの演芸番組です。
花筏親方も楽しみにしていました。
「東京かわら版」によれば、親方ご贔屓の鈴々舎馬風師匠が出演の予定だったんです
けど、変更になったみたいで、くやしがっているうちに電車が到着。
車内は電波の状態が悪いため、ラジオはあきらめて、松風町まで30分くらい、親方
と雑談していました。


 まあ、親方のことは何度か話してきましたが、とてもユニークな人で、ときどき変
なことを言い出すんです。
 たとえば、「最近、東京に行っても広瀬中佐の銅像がなくなったね」などと、何の
前ふりもなく言い出す。(笑)それを怒ったり馬鹿にしたりすると拗ねてしまいます
から、こっちも何か言って返さなくてはならない。
 話をしていてとても疲れるのですが、毎日が大喜利みたいで、それはそれで楽しい。
最近は、私も変なことを言ってみて、相手の反応を楽しんだりしています。
 関係ない人が聞いていたら、きっと気が狂っていると思うかもしれないので心配で
す。(笑)
 で、そんなやり取りをしているうちに、松風町につきまして、例の喫茶パーシモン
に戻ってきました。
 チェックアウトしてからここへ荷物を預けておいてあるので、これはもう、来るし
かない。(笑)
 それはそうと、帰りの北斗星の時間が午後11時45分ですので、あと3時間ちょ
っと待たなくてはなりません。
 そのあいだ、もう観光というわけにはいきませんので、どこかで過ごさなくてはな
らないのですが、安く粘れるのはパーシモンということで、またまた甘えさせていた
だくことにしました。


 マスターは野球を見ていました。
 阪神が勝ったのかどうか、私はファンではないので覚えていませんが、マスターが
ご機嫌だったのは事実で、相変わらずサービスがよかったです。
 とりあえず、ビールを頼みますと、普段はお客に中ビンを出しているのに、自分用
に買ってあった大ビンを出してくれて、値段は据え置き。(笑)
「カクテルならサービスするから、どんどん飲め」と言ってくれたのですが、今日は
電車の時間もあるし、二人ともそんなには飲めないので、大ビン2本で充分です。
すると、サラダとかチーズをどんどん持ってきてくれました。


 そのうちに、ホテルの社長が到着。
 ミニトマトを枝ごと持ってきてくれて、みんなして千切っては食べております。
 忘れないうちにと、ホテルの宿泊費が前年より1000円高くなっていた件につい
て苦情を言いました。
 すると、「シングルよりツインはもともと一人あたり500円高いのと、今年から
夏シーズン料金を始めたので、それで500円高くなっているので、都合1000円
高くなっている」ということ。
 まあ、あまりいろいろ言っていても仕方ないので、「来年はもっとサービスをする
から」ということで、その話はおしまい。
 ただ、素泊まりだけなのに、どういうサービスをしてくれるというのか、来年まで
疑問が残っております。
   ともかくも泊まれるだけでいいのです  弥助


 男が4人も集まっていると、話の内容はだんだん女性談義になっていくものであり
まして、ほかに客がいない、というか、マスターが追い返してしまって、(笑)そう
いう話が始まりました。
 マスターは「北島三郎の『函館の女』なんて嘘っぱちだ。函館にはそんな純な女は
いない」と言い出しまして。
 さて、それからどうなりましたかは、だいぶ長くなりましたので、一息つきまして
からまた改めて申し上げます。
          

その18・妻をめとらばの巻

 今日はめずらしく落ち込んでいます。
 昨日、受けてきた試験が残念な結果に終わりまして。
 以前ですと、受かるかどうか、いくらか気をもむ期間というのがありまして、そう
いう時間というのも気持ちの整理をつけるには大事なふうに思えるのですが、今はイ
ンターネットで結果がすぐ配信されるので、あっけないです。(笑)


 さてまあ、残りわずかとなりました「函館道中記」、最後までご辛抱ください。

女房は 北より南がいいそうだ!!

 妻をめとらば 才たけて 見目麗しく 情けあり
 という、これはご案内の与謝野鉄幹先生の歌でございまして、男にとって女性の理
想像であります。
 いろいろなことをこなす才覚、愛情、それだけでなく「見た目のよさ」というのも
重要だと、鉄幹先生はおっしゃっているわけで。
 なるほど、「人間は顔が命」という説もありました。(笑)
 これは、なにもこの、モデルと付き合うのがいいとか、そういうわけではありませ
んで。まあ、そういうのは私も懲りていますから。(笑)
 造作なぞはどうでもいいかとも思うのですが、やはりそうではない。
 充実した日々を送っている方というのは、もともとが少々残念でも、(笑)なんと
なく生き生きとした顔をしていらっしゃいます。そして愛嬌のある、優しいそうな笑
顔、こういうのが大事なんだろう、と私は解釈しているわけです。


 そういうわけで、「函館の女は、はるばる会いに来るだけの価値はない」とマスタ
ーが言い出したのを皮切りに、女性談義が続いております。
 話をしているのは、マスター、61歳独身。ホテルの社長、70歳独身。花筏の親
方、26歳独身。私、29歳独身。
 と、年は少々離れていますが、みな独身。(笑)
 マスターと社長は、奥さんを亡くしているということですが。
 マスターは米国に10年、社長は南アフリカに7、8年行っていたそうで、私や親
方よりもいろいろな意味で経験豊富ですから、無口な私は相変わらず黙っていて、(笑)
お話を聴いていました。


 それによりますと、「函館の女は情がうすく、愛情を注いでもすぐ離れていってし
まう」とのこと。「函館の女を嫁さんにするべきではない」とのことです。
「じゃぁ、嫁さんにするにはどこの女がいいのですか」と、親方の質問が入ります。
 まあ、こんな質問をしていますが、花筏の親方には将来を約束した立派な彼女がお
ります。太っていて、ぐうたらで、ばくち好きの男のどこがよいのかと思いますが、
(笑)世の中は不思議なものです。
 で、マスターの答え。「南九州の女が一番よい」。
 どういうわけかと問いただしますと、「南九州は、今でも男尊女卑の伝統が残って
いて、熊本や鹿児島で育った女というのは、男を立てることしか知らないから、嫁さ
んにするには男にとって一番都合がいい」とのことです。
 そういうわけで、「来年は函館に来ないで九州に行って、嫁さんでも探して来い」
と威勢をつけられました。(笑)
 まあ、南九州の女の人にも、新しい考え方を取り入れている人が多いということを
私はよく知ってますから、(笑)反論をしようと思いましたが、無口なので相変わら
ず黙っていました。(笑)
 県民性というのか、上州の女は気が強いとか、どこそこはどうだとか、私たちの世
代になるとあまり感じないです。
 函館の女だから情が薄いとか、鹿児島だから男を立てるとか、そういうものではな
いでしょう。
 たぶんマスターは函館の中でも悪い女に引っかかって、いろいろと放浪しているう
ちにたまたま南九州でいい人を見つけたと、こういうわけだろうと思います。


 こうして熱心に議論をしているうちに、外国人のカップルが店に入ってきました。
 アメリカ人の、二十くらいの二人連れです。
 10時を回って、通りに面した店は電気が消えていき、仕方がないのでここに入っ
てきたようです。
 女の子が、とても可愛くて、マスターがわれわれのテーブルから移っていって、飲
み物とか甘いものなどをどんどん作り始めました。
 社長は怪しげな英語で「年はいくつだ」とか「どこを観光したか」とか、いろいろ
聞いています。
 マスターも社長も、いい年なのに可愛い女の子にからきし弱いところがだらしない
です。(笑)
   かわいいと世界共通得をする  弥助


 そうこうしているうちに、時計の針は11時に近づき、電車の時間がありますので、
帰る支度を始めました。
 長々と世話になった礼を言いますと、何だかんだと言ってはいても、また来年もこ
いよとマスターと社長が言ってくれました。
 で、私と花筏の親方が店を出てからの話は、だいぶ長くなりましたので、一息つい
てから申し上げることといたします。
          

その19・さらば函館の巻

 大学が夏休みのため、2週間ぶりに筑波へきました。
 するとアパートの郵便ポストに圓窓師匠からのプレゼントが入っていました。
 ありがたく頂戴いたしました。
 御礼が遅くなりまして、申し訳ありません。


 そういうわけで、道中記のほうも、だらだらと続けてまいりましたが、いよいよ、
今回と次回の2回で、ネタもつきそうです。
 皆様のご声援によって支えられてまいりました。
 どうぞあと2回、ご辛抱のほど願いまして。

トイレから戻ってこない どうしよう!!

 楽しかった函館の旅も、時計には勝てず、いよいよパーシモンを出発するときがや
ってきました。
 会計は、またまた「二人で千円」ということで、甘えさせていただきました。
「来年もまたきますから」ということで勘弁してもらい、電車通りをてくてく歩いて
函館駅へと向かいました。


 帰りの北斗星は、深夜11時45分発です。駅についたのが11時半に近くなって
いました。あまり時間がない中、飲み物を確保しておこうと思って、自動販売機で冷
たいお茶を買いました。
 すると、今まで元気だった花筏の親方が、「トイレに行く」ということで、駅構内
のトイレに行ってしまいました。
 それはよいのですが、なかなか戻ってまいりません。
 トイレは改札からやや離れたところにあり、戻ってくるのに時間がかかるのかなァ
と思いましたが、それにしても遅い。
 もしこれで、親方が時間までに戻ってこなかったら、どうしたらよいのでしょう。
(笑)
 都内だったら、24時間営業の喫茶店やファミレスも知っていますし、カプセルホ
テルとか、最悪で映画のオールナイトとか、いろいろと悪い知恵がついていますが、
(笑)函館ではどうしようもない。駅前のコンビニで朝まで粘るのも格好悪いし、タ
クシーで帰るというわけにはもちろんいかない。(笑)
 いざとなったらグリーンホテルにわけを話して、もう一泊しようかということも考
えましたが、大慌てで大きな体がこっちに向かってくる。(笑)ああよかった、と思
って安心して改札をくぐったのですが、函館駅は改札からホームまでがとても長いの
です。
 青函連絡船の時代のなごりで、函館駅はとても大きいです。
 交通の要衝ということで、普通の地方都市の駅とは違います。
 そういう昔ながらの建物に、エスカレーターがつけてあって、なかなか便利なので
すが、時間ぎりぎりに来た私たちは大あわてで駆け上がりました。
 ホームにおりまして、私たちののる車両を探しますと、一番階段に近い1号車でし
た。
 この辺は交通公社の山口君が気をきかせてくれていまして、行きはロビーカーに近
い5号車を、帰りは函館駅では階段に近く、上野駅では中央改札までそんなに歩かな
いですむということで1号車を、それぞれ手配してくれました。
 ふだん女のこの話しばかりしている山口君も、仕事をやらせればできるということ
で安心しました。(笑)


 そういうわけで、なんとか自分たちの寝台を確保し、少し話をしていると、まもな
く列車が出発いたします。
 私と親方は、少々歩くのではありますが、またもやロビーカーに席を移し、30分
くらい話していました。
 うっかりと、タバコを買い忘れ、数本しかないタバコを二人で分けて吸いながら青
函トンネルの成り立ちのビデオを見ていました。
 楽しいことだらけで、4日間を過ごすことができました。
 パックのツアーでは味わえないようなところに行ったし、またとても歓迎してくれ
る方がいて、函館はよい町だなぁ、という印象を強く持ちました。
 わたしの奥さんになる人が、もし函館の出身でなければ、6月に結婚式をやって、
新婚旅行は函館道東巡りにしたいと思いました。
 今どき、そういうことを言っていると、笑われてしまいますけど。
 新婚旅行でなく、婚前旅行でもいいのですけど、(キャー)函館は再訪したいと思
います。
 次回の函館旅行のキャッチフレーズ。
「男だけでは見えない函館がある。女だけでは見えない函館がある」
 これを至るところで広めれば、「私が」という方が出てこないとも限りませんので、
何とかしようと思っています。(笑)


 そういうわけで、長々とつづってきたお話しも、北海道の分はお仕舞い。
 私も親方も、タバコを吸った後はすぐ寝てしまいました。
 青森駅での機関車の交代を見ている余裕もなく、朝になって目が覚めてからのこと
を申し上げるにはだいぶ長くなりましたので、この結末は次回にお話しいたします。
          

その20・家に帰るまでがの巻

 今日は午後、埼玉に戻ってきました。
 帰りに行田の友人のところに寄りました。工業のすぐ近くです。
 と言ってわかるのは、日比野さんくらい。
 ローカルネタですみません。(笑)
 夕方は雷が鳴っていました。鳴っていただけならよいのですが、落ちまして、行田
のケーブルテレビは一時的に見えなくなりました。
 重要な番組を見ていただけに、中断は残念でした。


 さてまあ、本題のほうも、度重なる中断にもめげず、どうやら最後までたどり着き
ました。
 長らくのご愛読ありがとうございました。
「函館道中記」、おわり。


 あっ、まだ最後まで書いてませんでした。(笑)
 それでは、最終回につき、少し長くなりますが、ご辛抱ください。

ふと考えた 自然とはなにか?

 うちの高校の伝統の一つに、全校行事があると「家に帰るまでが〇〇です」という
挨拶があります。
「家に帰るまでが体育祭です」とか、文化祭、観劇会などなど、いろいろと用いられ
ております。
 もともとは、私が体育委員だったときに体育祭で言い始めたのがきっかけなのです
 が、今日でも広く使われております。(笑)
 その本締めとしては、「家に帰るまでが、北海道旅行なのだ」ということを強く主
張しなければなりません。(笑)
 そういうわけで、だらだらとお話するわけでありますが。


 花筏の親方は、疲れたと見まして、ここにきて自慢のいびきをかき、私はうるさく
て寝台で寝ていられません。
 交通公社の山口君の切符の手配は万全でしたが、花筏の親方のいびきまでは考慮に
入れてなかった。(笑)
 そういうわけで、福島、郡山と、朝日を浴びる日本の穀倉地帯を見ながら、自然と
は何か、ということについて考えていました。
 緑一面の田んぼを見て、自然はいいなと思う、これは、私に言わせると間違いです。
 どれくらい間違いかというと、競馬場で競走馬を見て、動物っていいな、と思うく
らいの間違いで。
 どうしてかっていうと、稲は何もしないでいて生えてくるものではないからです。
 種まきから、その前の泥かきから、俗に八十八の手間ひまかけて、お百姓さんの努
力で作り上げられるものだからです。
 私は、「人の力の及ばないところ」を自然と呼ぶべきではないかと思います。
 だから、「〇〇自然公園」というようなところはもちろんのこと、護岸工事や防波
堤で固められた日本の川や海も本当の自然と呼べるところは少ないです。
 日本の山のほとんどは、植林という、人の力無しでは今日の姿はありません。
 アフリカ大陸、南極、高山地帯など、人間があまり行かないところに行ってはじめ
て、本当の自然が味わえるのだと思います。
 そして、人のいないところでこそ、人というものが理解できるのではないかと思い
ます。登山家は同時に哲学者であります。
 だからといって、お百姓でない人が田んぼを見るのが無意味だというわけではあり
ません。人とは何かというのを知るのに、人間そのものを調べるのではなく、人間が
作り出したものを通してうかがい知る、というのも立派な方法の一つです。
 田園風景を見て心が安らぐ、これは田んぼを見ることによって、無意識のうちに人
間の力の貴さを知り、感謝の念がわいてくるからだと思います。
 街を歩いていても、建築物を見て、いいな、と思う。これも、建物自体のもつ雰囲
気と同時に、背後にある人間の力の貴さを無意識のうちに感じていることと思います。
図で説明しますと、などというのは教師の悪いくせですが。(笑)


 自然・・・・・・人の力のかかわらないところ。
 田んぼ・・・・・自然ではない。人の力がかかわっている。
 自然を見ると・・人のいないところでこそ人というものがわかる。
 田んぼを見ると・人の作り上げたものを通して人というものがわかる。
 建築物を見ると・同じ理屈。


 ということになります。(笑)


 子供はお祭りが好きです。
 それは、一つの目的で多くの人が集まり、人そのものから人間の素晴らしさを感ず
るからでしょう。
 ただ、お祭りに行っても、「あれ買ってくれー、これ買ってくれー」と、飴や団子
を欲しがる中に、人間の作り上げたものに対する欲求がすでに含まれています。
 そして、成長の後これを改め、人間の作り上げたものに対する欲求が中心となって
くると、その一方で、今度は自然に対する憧れが出てくるのかもしれません。
 アフリカや高山地帯などに行き、本当に感動するには、ある程度人生経験を積んで
からのほうがよいように思えます。
 そういうわけで、今回の函館旅行では、五稜郭にしろ競馬にしろ、この五日間で出
会ったさまざまなことすべて、人の作り上げたものを通して人を知るよい機会になっ
たように思えます。


 花筏の親方は、宇都宮が近くなると目を覚ましました。
 通路でタバコを吸いながら、「またあとでじっくり話しましょう」と言って、降り
る準備をしていました。
 彼も心中秘するところがあったのでしょう。


 7月9日(月曜)。
 宇都宮で親方を見送って一人になると、私は競馬の決算をして、赤字がないかどう
か確認し、(笑)今回の成果として秋葉原で携帯電話を機種変更しました。
 そこからは通いなれたいつもの道ですので、鈴本演芸場に寄ろうというやましい心
は起こさず、そのお金は七月下席に取っておいて、(笑)まっすぐ家にたどり着いた
ことまでをお知らせいたしまして、まずは読み切りといたします。
            00000000
  読者の「無銭」より
    「函館道中記」の完結、おめでとうございます。
     楽しく拝見致しました。ありがとうございます。
     私も「アフリカ旅行記」を書こうと思っていますが、弥助さんのようには
    とても書けそうにありません。
  読者の「あきら」より
     昨日、信州の飯田で、完結を読み、函館料理を満喫しました。
     お約束のとおり保存しますからね。
  読者の「圓窓」より
     最後まで読ませる書き手ですよ、弥助さんは。
     いつか、圓窓サイト〔だくだく〕に転載させてくださいね。
          

その21・読者への巻

 ありがとうございました。
 ここまで、書けたのも読んでくださるお人があればこそです。
 この先、このような機会がありましたら、よろしく。
                                    弥助
2003・5・7 UP